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バイオリニストのスーツ
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月が変わり9月になりましたが皆さんお元気ですか? 今年は残暑といってもどうやらそれほど暑くならないようで、場所によってはもう秋風が吹き始めているところもあるようですね。 早くもっと涼しくなって欲しいものです。 さて 秋風が吹く中、本来でしたら秋冬物からご注文頂いたお客様をご紹介したいところなのですが、原稿を書く8月は閑散月であまりお客様が多くなく、加えて私自身は決算という一大イベントを迎え、8月は接客が出来ない状態でWebネタが見つからず困っておりました。 今月の「お客様いらっしゃ〜い」はどうしたものかな〜 色々悩んでいたところ1通のご相談メールが舞い込んできました。 さてさて 今回はどんなご相談でしょうか?まずはご相談メールからご覧下さい。 |
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★☆★ SHOPMASTERから一言・・・ ★☆★
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Sさん、ご相談ありがとうございます。 何でも演奏会用の礼服だとか、ヴァイオリンですか〜、カッコイイですね!! でもご相談いただいた演奏会用のスーツですが、実は大変難しいんですよ。 以前、ウチの工場長と話し合ったことがあるのですが(その時は指揮者でしたが)演奏会などでは手を前に出す時間が長いため、その時の着心地と見た目を良くするように仕立てないといけませんから... そこで早速こんなお返事をいたしました。 |
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★☆★ 東京SHOPMASTERから一言・・・ ★☆★
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Sさん どうですか? やり方は幾つかありますからお気軽にご要望をお申し付け下さいね。 Sさんがプロなら衣装代ですからフルオーダーで良いでしょうし、アマチュアでしたらそこまでお金を掛ける必要もないでしょう。 当店はもちろんどちらでもWELCOMEです。 するとまたお返事が・・・ |
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Sさん、早速の返信ありがとうございます。 バイオリンを持参でご来店いただけるとのこと、そこまで気合いを入れて頂けるとは。。。恐縮です。 でも、バイオリンを持ち運ぶのはそれなりに危険ですからそこまでは必要ありませんのでご安心下さい。(...と後ほどお返事いたしました。) そしてご相談いただいたのが8月上旬で、ご来店の8/28までは少々間がありましたので、そこでSさんのご相談内容について事前に問題点を整理してみることにいたしました。 どんなことが想定されるか皆さんも一緒に考えてみてください。 |
■ バイオリニストのスーツの着方とは・・・(問題点を挙げてみよう!) ■
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話を簡単にするため上着だけに限定してご案内いたしますが、バイオリニストの特徴としては次の点が上げられます。 1.手を挙げたままの姿勢が長い ・・・当たり前ですがバイオリンを演奏すると言うことはその間ずっと持ち続けると言うこと。 こういった場合はどういうことを意識すれば良いのでしょうか? 2.手を前に出す姿勢が多い ・・・これはバイオリンをやってみないと分からないかも知れませんが、バイオリンを弾くということは画像のように手を前に出した姿勢を続けると言うことです。 このためにはどうすれば良い? これは普通の皆さんでもPC仕事が多い方などには共通する問題です。一緒にお考え下さい。 3.腕を横に振る動きが多い ・・・加えてもう一つの問題はバイオリンは持つだけでなくその中で動きがあるということ、 バイオリンの場合右手を前後に動かすことが多いのも特徴で、このためにはどうしましょう? 4.素材は・・・ ・・・バイオリンを弾くとき、そう、コンサートの時は照明が結構キツイですよね、スーツは黒ですから熱を吸う。加えて動きのある演奏会です。 こんな時はどんな生地を選んだら良いでしょうか? こんなところがヴァイオリニストならではの問題点ではないでしょうか? そこでSさんご来店時に、この問題に対して次のようにご説明いたしました。 |
■ こうしてはどうでしょうか?(解決策のご提案) ■
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アームホールを小さくするとどうして軽くなるのでしょうか?
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・・・それは、腕が重く感じるのは見頃(上着の胴体部分)が引きずられるためそのように感じやすいので、そこでアームホールを小さくすれば、胴体に対して袖が独立してくるので軽く感じ手を動かし易くなるのです。 (よく腕を動かし易くするのにアームを広げては・・・という方がいらっしゃいますがそれは間違いです。) そこで基本はアームホールを小さくすることにいたしました。 でも、アームホールって丸い穴ですよね〜。 |
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小さくするってこの場合どこを小さくするのでしょうか?
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答え. 今回は腕の上げ下げをしやすくすることに主眼を置いたためアームホールの下側(脇の下の部分)を浅くし、一方では腕を上げっぱなしにするため肩の山が高くなり過ぎるため肩先を小さくしました。 つまり丸形のアームホールを横に押し潰したような形に変形させることにしました。(・・・何故全体を小さくしないかは2.で説明します。) |
>>2.手を前に出す姿勢が多い |
>>3.腕を横に振る動きが多い 腕を前に振ると言うことは次の2点が問題になります。 1つは手を前に出すとき背中が窮屈になると言うこと(画像内赤線部分)、 そしてもう一つは腕を奮ったとき筋肉が収縮し部分的に通常状態より腕が太くなると言うこと。(画像内青線部分) |
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そこでこの答えは・・・ 背中の窮屈さに対しては背中側の生地にゆとりを持たせること(専門的には背幅だし) そして、腕が太くなることに対しては袖幅を少し太めにすること、これで対処することにいたしました。 |
>>4.素材は... 最後に素材ですが、着用する所の照明が強く色が熱を吸う黒であること、動きがあり暑くなりやすいこと等を鑑み、素材は夏物で一番薄手の礼服地をオススメすることにしました。 夏物礼服地となると量販店にある物は黒の深さが浅いもの(=白っぽく見える物)が多いですがオーダー向けの生地は黒の深さに気を遣っていますから、これなら真っ黒で、他の人と比べて白っぽい夏物→安っぽい外観とはならないようなものをオススメしました。 もちろん裏地の素材は発汗性の良いキュプラです。 さぁ、これでバイオリニストのスーツ専用の体型補正が出来ました。 今回のスーツは普通に立っている時に美しい(格好良い)スーツを目指した物ではなく、ヴァイオリンを弾いているときに楽で、その時に美しく見え、着心地の良い物を目指しました。 さてさて 着心地はどんな物になるのでしょうか? いつにない切り口でのオーダースーツですから結果が楽しみですね。 Sさんのスーツはただ今お仕立ての真っ最中です。 仕上がりましたら、Sさんのご感想を皆さんにご紹介したいと思いますので是非楽しみにしていて下さい。 |