|
|
〜大阪編〜 薩摩ボタンってご存じですか?
|
天高く馬肥ゆる秋 ...の言葉通り、今年は秋の訪れも順調なようで、10月に入ればさすがにお客様からのお問い合せも目立って多くなってきました。 ウォームビズあり、コートありと嬉しい悲鳴ですが、今月はその中から私がもっとも興味を引いたお客様をご紹介したいと思います。 それはファッションへの造詣では私も顔負け、玄人はだしのTさんからのご相談メールで始まりました。 Tさんは以前にも「この春はカラフルな装いで」でご登場頂いていますが、中年とは思えぬバイタリティの持ち主。 野球にゴルフにテニス、スノボとスポーツ万能でフットワークも軽い、ちょい悪オヤジを地で行っているようなお客様です。 |
|
Tさん、紺ブレのご相談ありがとうございます。 Tさんから見れば紺ブレなど入門編、何に何をどう合わせるかなど公式も全て承知されている上でのご相談です。 このメールの文面を見てもプロさながらのうんちくがちりばめられています。 私のアドバイスなど些かおこがましいのですが、こちらもこれでメシを食っていますのではりきってご返事差し上げました。 ・・・と、ここまではよくあるパターンでしたが、この後頂いたメールで予想外な方向へ展開してゆきました。 |
|
薩摩ボタン??? う〜ん、どこやらで聞いた事があるような... あっ!思い出した! 今を去ることウン十年前、某テーラーのオヤジさんから「実際に見たことはないけど、陶器で作られたえらい高いボタンがあるそうや」と聞いた事があったっけ? 早速インターネットで調べますと、陶器で作られた主に輸出用のボタンで、幕末当時の薩摩藩が主に外貨獲得の為に製造した事に由来してこの名が付いたそうです。 古伊万里などと同じく、幕末当時に作られたボタンは骨董品の収集家には垂涎の的。 今では高値で取引されていると聞きます。 もちろん現在では復刻版で作られているようですが、それでもかなり高価なようです。 ひょっとするとあの西郷さんも当時は手に取ったかも知れませんね。 私も見た事は無い幻の薩摩ボタン、これは商売そっちのけでぜひ見てみたいです! そこで、Tさんにはボタン見たさに(すいません!)細かい点はご来店時にご相談させて下さいとお願いしました。 そして、数日後早速Tさんがご来店され、席に着くなり,やわらポケットから取り出されたのがこのボタンです。 |
||
|
||
画像ではちょっと分かりにくいですが、よく見れば、紺色の地に歌麿風の美女が描かれています。 裏側を見ればお茶碗みたいで、陶器とよくわかります。 なるほどこれが薩摩ボタンですか?価格は?とお聞きしますと、袖用の小ボタン1個で2千円余り、2個で都合5千円なりとさすがのお値段。 お客様から思い出の詰まったボタンなどを持ち込まれるのはそう珍しい事ではありません。 ただ、今回はモノがモノだけにより丁寧にお預かりしました。 興味はもっぱらボタンへ集中ですが、悩まれていた肝心の紺ブレのお仕立てはご相談の結果このようになりました。 |
|
さぁ、これでひとまずはTさんの紺ブレの内容が確定しました。 なにせ陶器だけに、プレスや接触で割れる・欠けるはもってのほか。 工場へはその旨厳重注意してくださいと職出ししました。 ご注文は定番としてのお馴染みの大人の紺ブレですが、袖先のボタンひとつでどう変わるんでしょうか? さぞやオリエンタルムード溢れる仕上がりになるのではないかと期待しています。 |