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同じ生地ありますか?
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暑さ寒さも彼岸まで、、、とはよく言ったもので暖冬だった今年もなんだかんだ寒の戻り、そして春分の日を境にまた暖かくなり始めました。そろそろ春物の準備はお済ませでしょうか? さて 今月は季節感とはあまりないのですが、今回は ある新規のお客様から『既製品で持っているスーツと同じ生地でベストを作れないか?』というちょっと変わったご相談をお受けしましたので、その方Yさんをご紹介したいと思います。 Yさんとのやり取りはこんなご質問メールから始まります。 |
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非常に目的がハッキリしたご質問... つまりポールスミスで上下を買ったけれど、実は3ピースで欲しかった。 だから同じ生地でベストだけオーダーできないか?といった所でしょうか? 既製品ですとなかなかベスト付きの3ピースってないですから、あったとしても色柄の選択肢が少なくて事実上選べませんからね。 ポールスミスに限らず既製品全般に言えますよね。 でも、Yさんのようなごくごく一般的な消費者のご要望に対し、これをオーダーでお答えするというのは実は非常に難しいことなんです。 何が難しいか?というと、仕立ての方ではなくて生地の手配の方。 こんなことがあり得ます。 1. 生地が見つからない(あっても割高) >>> 各生地メーカー(今回は伊ポリカルポ社)の生地というのは余程定番でない限りは毎年色柄が追加・廃止されるため、全く同じ生地を少ない量だけ発注というのは物理的に存在しなかったり(品切れ)、手間暇が掛かりすぎてコストに合わず、事実上取り寄せるのが難しいケースが殆どです。 (簡単に考えればベストだけのために航空便で生地を取り寄せたら運搬費だけで+1〜2万位はかかりますから。) 2.既製品とオーダー品で微妙に違いを持たせているメーカーも >>> このようなご相談は得てして、既製品に不足するアイテムをオーダーでカバーということになりますが、意外と知られていないのはメーカーもアパレル用とオーダー用に商材を分けているケース。 例えば、人気の伊ブランドでも最近は日本の既製品ブランド向けにも販売されていますが、こういったところだとアパレル用とオーダー用では、品質も色柄も分けて製造するケースが多々あります。 伊REDA社、伊CANONICO社などが良い例ではないでしょうか。 3.例え手配できても、こんな事も! >>> そして、運良く同じ品番の商品を手配できたとしても。。。余り知られていないことですが、生地というのは染め上げる釜が変われば、微妙に色合いが変わってきます。 そうすると、車の事故の後再塗装すると微妙に色の違いが出るように、同じような違和感が出てしまいます。 ...と、こんなことから、なかなかご希望通りには行きません。 そこで、こんな風に回答いたしました。 |
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う〜ん、やる気がない訳では決してないのですが、、、私にしてはやや淡泊なメール。 でも、過度に期待を与えてしまうのも良くないですし... そして、残念だけどこれで終わったかな?と思った矢先、またYさんからメールを頂きました。 メールを頂いた日の内にお返事を頂き、Yさんの熱意が感じられます。 |
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そうか! 今回は黒無地だから、色目も比較的分かりやすいし他メーカーの物でも流用可能かも知れないな。 100%でないまでも近ければ良いならやってみよう! 「ベスト単品だから大した売上にならない」なんて考えてはありませんよ!(←言うとかえってそう思っているかのようだ...) そこで翌朝一番でお返事をしました! |
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その後、Yさんからもご連絡が入り、来店時に倉庫へ行って探すくらいなら先に自分のポールスミスを送りましょうか? ということになり、お言葉に甘えお送りいただきました。 そのスーツがこちら!! さすがポールスミス、なかなか凝ったデザインです。 ポイントはやはり凝ったデザイン(左上襟のタブやその形状、比翼仕立てのところなど)と相変わらずのカラーリングですね。
そして画像からは分かりませんが肝心の生地の方はというと、これが当社でも扱っている伊ポリカルポのごくごく普通の平織りの黒無地でした。 ヨシ!これならポリカルポの物はなくても同様の伊ビエラ地方の生地メーカーとして伊ロロピアーナもあるし、伊キャノニコもある。 また、調べてみたら似たような色目で全く同じ織りだ! これならYさんにご来店いただいても無駄足にならない! ...ということで、ご来店いただく事になりました。 そして決まったデザインがこちら...(当初はデザインで凝るという話ではなかったのですが・・・) |
□ ご注文内容 □ | |
<< ベスト単品 >>
・生地 は ・・・ 生地は伊キャノニコの黒無地が一番色目も織り方も近く、お値段もお買い得と言うことでこれに決定! ・基本デザイン ・・・ 6つボタン >>> ベストのデザインというのは本来そんなに凝った物はないのですが、当日ご来店された際のベストがバーバリーのなかなか凝ったデザインで、色んなアイテムが追加になっていきました。 ・タブ付き >>> きっとこのベストの一番のポイントになるのでしょうね。 ベースとなったポールスミスの上着衿型(タブ付き)にあわせてベストの衿もタブ付きです。 こりゃ、型紙はオリジナルで作らなければならないから、ポールスミスの上着をお預かりしなくてはならないですね。 ここまで凝った衿型は初めてなのでYさんへは努力目標と言うことで承りました。 ・腰・胸両ポケット付き >>> 画像を取り忘れてしまいましたが、腰ポケットはフラップ付き、胸ポケットは両玉縁でスッキリと....なかなか凝ったデザインです。 << ついでにスーツも♪ >> ありがたいことに、Yさんからは同時に別の生地でスーツのご注文も頂いてしまいました。(私ってセールス上手?) デザインの方はこんな感じです。 ・基本デザイン ・・・ 衿幅細めの2つボタン お好きなブランドはポールスミスの他バーバリーで当日はBurberry Black Labelのスーツをご着用でしたのでモッズまでは行かないけれど、若向けのブリティッシュ好みと言ったところでしょう。 ディテールも結構凝っていました。 ・ チェンジハッキング(英国調スーツの代名詞) ・ ウエストをギュッとタイトに、袖幅も細く。 ・ ボタンホールの糸色も変更しポールスミスのようにアクセント付け ・ パンツはちょっと長目の持ち出し6センチ。2重ホック付き。 |
・・・と、こんな感じでYさんのご注文がまとまりました。 当初は「同じ生地でベストだけ合わせて作って!」という話がなんか大きくなってしまいましたね。(^_^;) Yさん、沢山の御注文を有り難うございました。 それでは次回Yさんの仕上がり、特にベストのタブは上手くできるか微妙ですが、とにかく頑張りたいと思います。 仕上がりをどうぞお楽しみに! (今回は同じ生地の話が中心でしたが次回仕上がりはディテールを中心にご紹介します。)
最近、おまけの話が面白い、、、とよく言われるので無理してちょっとだけ。 実は全然話が飛んでしまいますが、Yさんがご来店された日3/22の前日は春分の日でお休みだったため、久しぶりに子供と釣りに行ってきました。 行った先は、静岡県沼津市。 結構遠いところでしたが、富士山も雄大で風光明媚。 のんびりと親子で釣りが出来て良い息抜きが出来たのですが、この日Yさんとお話をすると、なんとYさんは沼津からお越し頂いたとのことでした。 『いや〜っ、実は昨日沼津に釣りに行ってきたんですよ!!』 「どうでした?良かったですか?沼津は?今の時期ですからヤリイカですか〜?」 『えぇ、ヤリイカでした。。。子供がオニカサゴを釣って、、、』 「それは珍しい高級魚を!」などと大盛り上がり。 ※作者注:本当は魚やイカの画像もあるのですが、さすがに日記帳ではないので掲載できません。スミマセン。(-_-;) お仕立ての仕事は仕事ですので厳しくやりますが、ご注文を通じてお客様の私生活やビジネスなどの話をすることは色んな面で刺激になり、お客様のことをもう一歩深く知ることができる原動力になります。 今回は釣りや観光の話でスーツには殆ど役に立ちませんが、後からメール等で相談頂いた時など名刺があったり、こういった話題を記憶していると後々話(メール)がしやすくなるものです。 今回はとても楽しい一時を過ごさせていただきました。 Yさん有り難うございました! |