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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 暑く!暑い!! 
今年は3〜4月が意外と肌寒い日が多く、ゴールデンウィークを明けてから一気に初夏の陽気になりましたが皆さんいかがお過ごしですか?

5月中旬にもなると梅雨までの間は意外と真夏日なんてことが多く、今年はGW期間中も結構暑かったですよね。
これから蒸し暑い梅雨、その先にはカンカン照りの真夏が控えているとなるとファッション好きの人はうんざりするのではないかと思います。

そこで今月は、「暑い!暑い!!」と諦めずに、夏に向けてどこまで涼しくできるか挑戦しよう!と考え、お客様にご登場いただきながら涼しいスーツ(ジャケット)について色々とご紹介したいと思います。
今年でCoolBizも3年目、そろそろクールビズ入門編の紺ブレに飽きたと言われる方は参考になると思いますので是非ご覧下さい。

今回ご登場いただくお客様は5/12に東京店へご来店いただいたリピーターのKさん
Kさんは、この日 先月ご注文いただいたスーツのご試着にお越し頂いたんですが、ひとしきりご試着を済ませた後色々と雑談をしていると、いつしかカジュアルジャケットの話になっていき...
次のようなご質問からご注文が進んでいきます。....が
Kさん: 夏用のジャケットで提案はないですか?
私: 夏用のジャケットですか、、、まずはどんな用途でお使いになりますか?
Kさん: そうですね、スーツは先程頂いたので今度はカジュアルな物が欲しいです。
こういったご相談で、私達がまず最初に聞くのは、
ビジネスユースがどれ位か?(どんな用途で使うか)
ということ。
何故、この質問を真っ先にするかというと、一口にジャケットといってもビジネス兼用が可能な紺ブレから純粋なカジュアルジャケットまで広範囲に及びますから、お客様の求める物の「」を絞るために、まずはビジネス度を伺い、そこからお客様の求める大体のイメージを付けるのです。

つまり、ビジネス度が高いならばお好みはあるにせよ、それなりにカチッと見せる中でどこまで夏用に軽く涼しく仕立てるかということを説明しますし、
逆に、ビジネス度は低くて良いからカジュアル度を高く、というのであれば「見た目のカチッとさ」の優先順位を下げ、いかに軽く涼しく仕立てるかという事に重点を置くことになるのです。

のようにご紹介すると、読者の皆さんは『それじゃ〜、どんな選択肢があるの?』と思われると思います。
そこで、Kさんのご注文からは少し脱線してしまいますが、ビジネス的な物からカジュアル的な物までその選択肢をまずはご紹介しましょう。

ビジネス度合いとジャケットの選択肢
ビジネス度合いによってジャケットの選択肢はどれ位変わるのでしょうか?
ちょっと考えてみるとこんな切り口がある事に気付きます。
素材(生地)、色柄、デザイン、仕立て方法...
表にまとめてみるとこんな感じです。
<< 強 ビジネス色
カジュアル色 強 >>
素材
通常のスーツ地
(ウール物)
ウール以外を含む素材
(綿・麻・シルクなど)
色柄
ベーシックな濃紺
グレイ無地
パステルカラーや
大胆な格子柄
デザイン
ブレザーなど
スーツライクなスタイル
例:3つ釦段返り
 紺ブレetc
軽さを強調した
デザイン
例:アウトポケット
  ミシンステッチ
裏仕立て方法
  肩パッド入りの背抜き仕立て※1
→ 半裏仕立て※2・大見返し※3(アンコン仕立て)
→ カバーオール仕立て※4
簡単に説明しますと...
ビジネス色の強いスタイルを求めるのであれば、一番無難なのは紺ブレグレイパンツなどの所謂ジャケパンスタイルが一番ビジネス色が強いです。
素材もやはりシワになりにくいウールなどがビジネス的で、コットン・リネンなどシワが付きやすい物はビジネスでは敬遠されがちです。

一方、カジュアルメインで考えるので有れば色は気分に合わせて明るい色にしたり、大柄なチェックを使ったり、仕立ても敢えてカチッとさせない軽い雰囲気の物が好まれます。
そんなところがこの表から読みとれると思います。

でも、裏仕立て方法の所はなかなか難しい言葉が一杯書いてありますよね。
スーツ好きならともかく一般の人には分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで上の表で※印を付けた裏仕立て方法について解説しますと次の通りです。

※1:背抜き仕立て
これは一番夏物としては一般的な仕立てです。
背中の部分の裏地を抜いたから背抜き。

ビジネス度は一番高く、当たり前ですが内ポケットも付きますし、胸ポケットも、当店の場合はタバコポケットも付き、芯地などは普通は接着毛芯でお仕立てします。
(画像内色線部分が内側での副素材を表現しています。)
※2:半裏仕立て

続いてが半裏仕立て。こちらは裏地の使用量を背抜きの約半分にしたり、芯地を堅くて重い毛芯から軽い接着芯に代えて軽量化した仕立てです。

ご覧いただくと分かるかと思いますが、これにすると腰ポケットの袋地が裏側に出てしまうためカバーを付けたりしないと見苦しくなります。

また裏地をペロッとめくるとすぐ胸ポケットの袋地や芯地などが見え隠れするのもこれの特徴です。
※3:大見返し
アンコン仕立てとも呼ばれるこの仕立ては、見返し部分を大きく表地でとった物。
※2の半裏部分がちょうど表地で出来ているようなそんな形です。
こちらにするとスーツの内側(見返し部分)を表地で作るので豪華さが出る反面、素材が綿やリネンなど堅い素材だとゴワ付いてかえって着心地が悪化する危険性があります

でも、画像はゼニアのサマーカシミヤ&バンブー素材を使用したジャケット。
色々加筆してあるので分かりにくいですが、この豪華さは半裏と比べると圧巻ですね。
※4:カバーオール
カバーオールとは本来は上下がつながった作業服のような物を意味するのですが、当店のは軽量化を最優先にして、肩パットをなくし芯地や袋地なども一切排除した一番シンプルな軽いシャツジャケットのような物を指します。
こちらの副素材は・・・???
あれっ? 何にもありませんね。

 だから軽いんです!

さてご覧いただいていかがでしたでしょうか?
たかが裏仕立てでも結構色んなやり方があるでしょう?

さて....随分脱線してしまいましたがここでKさんのご注文に戻りましょう。

Kさんはカジュアルメインと希望されていました。
...ということで私としては次のようなご提案をすることに

・素材はウールでなくてもOK
・色柄は紺ブレよりもっと個性的なパステルやシアサッカーのような柄で
・デザインはアウトポケットスタイル
・肩は肩パッドなしのマニカカミーチャ
(シャツ袖)仕立て
・裏仕立ては半裏仕立てかカバーオール仕立て


いかがでしょうか?
これまでの説明で何となく私の考えがお分かり頂けましたか?

1点だけ説明が欠けているところがありましたね。
そう、マニカカミーチャ。ちょっと補足します。

★☆★ ちょっと一言・・・マニカカミーチャって? ★☆★

最近は百貨店でも随分多くなりましたので説明は不要かも知れませんが、肩パットや芯地・裏地などの副素材を極力排除して、軽く仕立てたイタリア的な仕様をマニカカミーチャと言います。
特徴としては、シャツ袖と言われるように肩(袖付け)の部分がシャツのようにシワシワになっているところ。
本来スーツの袖付けは生地を充分アイロンワークでいせこんで、こうならないのを良しとしているのですが、それを逆手にとってカジュアル感をアップさせた仕立て方です。
ポケット地や芯地の全くないカバーオール仕立てと相まって仕立てると非常に軽く、身体を動かし易く、それ故シャツジャケットなどと呼ばれます。

そして...
Kさんとマニカカミーチャやカバーオール仕立てについてお話ししていく内に、、、

Kさん、このマニカカミーチャだとどれ位軽くなるの? ...と言われ、、、
本来ですとオーダースーツでは各商品全てで見本服がある訳でないので具体的に説明するのは難しいのですが、たまたま私のマニカカミーチャ(カバーオール仕様)のジャケットが店頭展示されていたので、そちらに袖を通して貰うことに。

するとKさん
『これ、めちゃくちゃ軽いですね!』と大興奮。
すぐ『この仕様でお願いします!』となりました。

いやいや、私の私物とはいえ、見本服があって何ヨリです。

■□■ 東京SHOPMASTERより一言・・・ ■□■

お店には幾つか見本服がありますが、これは概して私の私物が多いです。(大阪は大阪SHOPMATER)

本当でしたら、お客様のサイズ見本になるように色んなサイズで見本服を作るべきなのですが、そうしてしまうと際限なくなってしまい、コスト高販売価格に反映、となってしまいますからやむなく店主たる私のサイズで見本服を作るのです。
...このため、私のスーツはいつも仕立てて半年はボディーに着せられ展示されるため、自分が袖を通せるようになるのはいつも1シーズン後。
致し方ないところですが、一番旬な時期に着れないのはちょっと残念ですね。

ちなみに、今展示中はでご紹介したシアサッカーっぽいストライプのジャケットとこの1着。
3月に紹介したコンケープドショルダーです。(これはなかなかの評判)。

またまた話が逸れてしまいました・・・Kさんのお話に戻します。
続いて、Kさんが悩まれたのは生地についてでした。

生地は・・・
Kさんは私のシアサッカーっぽいストライプ柄の生地も良いな〜と仰られていましたが、ここはカジュアル専用なんだからもっと涼しげな色目が良いだろうと言うことでアニオナのネイビーストライプ柄の生地に。(こちらはサンプル帳には掲載していない商品でした)

画像をご覧いただいていかがですか?
アニオナは現在はE Zegnaの関連会社ですが、もともとはレディースのセレブブランドとして名をはせたメーカー。
漂う高級感は、ゼニア以上の物があります。
お決めいただいた生地は、ネイビー地にストライプ柄ですが、デニム的な藍色ですので見た目にも涼しげでGoodです。
そして、生地が決まると今度はデザイン(お仕立て内容)です。

お仕立ては・・・
お仕立てについてKさんは先述の通りマニカカミーチャを希望されたのでご試着された私のジャケットが画像のような感じでしたので、その仕様でお願いします!、、、となったのですが、、、

途中から別の私の私物ジャケットであるカバーオール仕様(赤ジャケット)をご覧になり、
『こっちの方がもっと軽い!』ということでそちらに変更。

ちなみに当初のマニカカミーチャ(半裏仕様)と最終的なマニカカミーチャ(カバーオール仕様)とではどこが違うかと言えば、先述の画像の通り、カバーオール仕様の方が全く芯地やポケットの袋地などがないため、腰や胸のポケットはアウトポケットにせざるを得ないところが大きな違いでした。

Kさんにはこの点もご了解いただき、これでようやくご注文がまとまりました!!
(ホントは、別途カジュアルパンツのご注文も頂いていましたが紙面の関係で出来上がりの時にご紹介します。)

さてさて、
暑い夏に向けた軽くて涼しいカジュアルジャケット、どんな風に出来るでしょうか?
真夏が楽しみなそんなジャケットになれば良いですね。
皆さんも夏はTシャツとジーンズというスタイルも良いですが、ちょっとした時 襟付きのジャケットは重要ですよ〜。
是非ご検討下さい。