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オーダースーツのヨシムラ
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 大阪編 エドワード7世って誰?
8月も半ばを迎えますと、あれほどうるさかったセミの鳴き声も遠くなり、今年の夏もそろそろ峠を越えたかなと、例年の事ながら一抹の寂しさも憶えます。

売り場の夏物もしっかりと活躍してくれたお陰で在庫も薄くなり、代わってひと足早く秋物もお目見えしています。
ただ、肝心の秋冬物のサンプル帳は只今鋭意制作中(一野クンが頑張っています)ですので、こちらは今しばらくお待ちください。

....と、そんな行く夏を惜しむかのような頃ですが、傍らではセールで頂いた夏物のご注文が続々と仕上がり中です。

そんな中から今回ご紹介するのは、大阪店としては久し振りのこだわりのスーツのご注文でした。

私なりにこだわりのスーツとは大きく分けて以下の3つのタイプに分類しています。

□ デザインのこだわり □
こちらは千差万別、HP開設以来7年余り、お客様より持ち込まれる幾多の難題?にもめげず、ありとあらゆるデザインを承って来ました。
イージーオーダーとしては他社の追随を許さずと自慢のラインナップが勢揃いです。

<代表例としてはこちらをご覧下さい>
参考URL >> 型抜きの仕上がりはどこまで出来た?

□ サイズのこだわり □
ここをもう少し絞って、ラインはこのようになど限界に挑戦するかのようなサイズへのこだわりもお客様の要望があればこそ。
縫製現場サイドとの やりとりの末、成せばなるとばかり、お陰で今やスタンダードとなった例も珍しくは有りません。

<代表例としてはこちらをご覧下さい>
参考URL >> ショートな上着丈はどれくらい?

□ 素材のこだわり □
あんな素材無いかしら?
街でこんな素材を見かけたんだけど。。。とお問い合せを頂く事も珍しくは有りません。
生地屋の意地として、その声にお答えすること数知れず、お客様より感謝頂いています。

<代表例としてはこちらをご覧下さい>
参考URL >> 今よみがえる思い出のジャケット

いずれも、こだわらせたら名うてのお客様揃い(失礼)でしたが、今回ご紹介のお客様はその中でも特にデザインへのこだわりを持たれているお客様でした。

兵庫県にお住まいのSさんがそのお客さまなのですが、ご来店の前にいくつかメールでご相談頂きました。

□ そのこだわりのポイントを集約しますと・・・ □
詰襟服の胸元を折返したような Vゾーンが極く小さくゴージ線が垂直に近い上着
トラッドのようなダーツを取らない寸胴タイプで肩はナチュラルショルダー
ウ〜ン、単なるトラッドのなのかなあと、これだけではもうひとつピンと来なかったのですが、続いてのメールで
モデルはエドワード7世が着ているようなスーツ
と頂きましたので、え〜エドワード7世、それ誰?となった次第です。

□ 少し話がそれますが・・・ □
ここで少し西洋史の勉強を....
エドワード7世(1841〜1910)物の本によりますと、彼はその名の示す通り、20世紀初頭の英国の国王で、ビクトリア女王の長男にして、後に第一次大戦へと発展してゆく三国協商を締結する...etc

とあるのですが。。。固い話はこれくらいにして、なかなか私生活も奔放なようで、スキャンダラスな女性関係にもその名を残しました。
また、ファッション面での功績はディレクターズスーツの考案者としてその名が知られ 、某有名コートメーカーの顧客にも名を連ねていると、公私にわたり硬軟使い分けた王様だったようです。

参考URL>> 今年は何故かディレクターズスーツ

 (閑話休題)
...と言うことで、Sさんの狙いはエドワード7世が着ていたとなると、ほぼ100年前のスーツの復刻版を目指してということになりそうです。
さすがの私も100年前となると自信はありません。

そこで来店頂いたSさんと具体的にポイントを詰めてゆきましたのでご覧下さい。
その際、参考資料としてクラシックな画像のいくつかをお持ち頂きましたので、それを眺めつつこうかな?と知恵を絞りました。

素材・・・・・麻100%、オルメザーノ社製 ブラック
>>> 現在の麻素材は夏のお洒落な素材として人気がありますが、当時は使用する上での強度と言う点で麻は非常に重宝されたようです。

前ボタン・・・4ツボタン
>>> 当時のタイプにはこの胸元がギュッと詰まった4ツボタンが多く見かけられます。
今では詰め襟の学生服やマオカラーに当時の名残が見られます。

ゴージライン・・・・ハイゴージA
>>> ここが結構Sさんのこだわられたポイントで、これを詰めるのにやりとりを重ねました。
今のトレンドはゴージも高く、かつその角度が横へ寝ているタイプですが、当時はその角度が立っていました。

ベント・・・・フックベント

袖ボタン・・・・2つ、本切羽

チェンジポケット付

フロントダーツ無し
>>> ウエストにダーツを入れて絞るというのはそんなに古い話ではないようです。
昔の写真を見るとウエストを絞らない寸胴タイプが主流ですね。
当時のハイカラなタイプでしょうか。

フロントカット・・・・丸いLGタイプ
>>> モーニングや燕尾服がそのルーツかと思いますが、フロントカットは元々カッタウエイが源流でした。

肩パット・・・・・入っていないような極薄め、ナチュラルショルダーと言われるタイプです
>>> パットの改良が進んでいない当時は今のように肩にパットを入れて整えるという手法が余り見られなかったようです。
今で言うところの、マニカカミーチャに近い仕様がが当時はオーソドックスな肩の仕様だったようです。
(正式には肩のパッドと言いますが、パットの方が通りがいいのでそのまま使用します)

ベルトループ無し・・・・・サスペンダーボタン付き
>>>これはクラシックなスーツの定番ですね、ベルトループがいつ頃から当たり前になったかは定かではありませんが、今は実用よりはお洒落なアイテムとして愛用される方も多いようです。

時計ポケット
>>>腕時計がない当時は必需品で、懐中時計を忍ばせる実用目的で、作られました。

本当はパンツの前立てもボタン留めにするとよりクラシックなのですが、なにぶん使用に差し障りもありますのでと言うことで、今回は普通のジッパータイプとなりました。
☆オーダー担当清水より一言・ ・ ・

エドワード7世がイメージモデルとあって、ブリティッシュもブリティッシュ、これが英国スタイルの正統派でなくてなにが正統派かと言いたいほどのスーツとなりそうです。

ただ現在のスーツの原点とも言えるような装いはSさんにご教示頂き、本職の洋服屋としては誠に恐縮しています。
ぜひ仕上がりを楽しみにお待ち下さい。