いや〜、今年は暖冬だと思って早めに春夏物を手配したのにここに来て寒い日が続きますね、、、
ファッション業界は季節感が勝負ですから、この寒波には少々困っています。

さて
そんな春物がまだ振るわない今月は､､､春夏の新作スーツの仕上がりをご紹介できませんので、今月は２月前半にご登場いただいたＩさんのトリミングジャケットの中編として、Ｉさんの仮縫いをご紹介したいと思います。

それではちょっとＩさんのご注文を振り返ってみましょう。
Ｉさんのご相談ポイントはこんな所でした。

■ Ｉさんのご相談ポイント■

頂いたメールを掲載するのが一番分かりやすいですね。
こんなメールを最初にご相談いただきました。

そうです。
Ｉさんは衿やポケット回りにパイピングを施したトリミングジャケットをご希望でした。
最近ポールスミスやベルサーチなどでありますよね。あんな感じです。

ご予算等々を伺うと、仮縫い付きフルオーダーでもＯＫとのことでしたので、こちらでご注文を進めました。

でも、途中色々と問題が発生し...

■　問題点１：トリミング素材は･･･　■

最初にぶつかった問題がトリミング素材でした。
トリミングといっても素材はいろいろあって､､､ポリエステル製のサテン系で光沢感の強い物もあれば、昔の軍服のようなモール（編み込んだロープのような物）が付いた物までありますし、正直なところこういった特殊素材は服地と言うよりは資材に近く、私もお仕立てに取り入れたことがありませんでした。

でも、工場長に聞けば丁度昨年同様のオーダーを某百貨店から頂いたことがあり、仕立ての上では綿でもポリでも問題ないとの回答。
あとは、素材をどこで仕入れるか？だけが問題として残りました。

そこで、いつものように(?)Net検索をすると意外と近くにリボン屋さんがあることが判明。
早速訪問し、相談するとこんな素材を見本として下さいました。
Ｉさんからのご要望はチョコ茶とのことでしたから、色目はこれでＯＫ。
でも、素材は･･･どうかな？４つあればまずは大丈夫かな？

でも、テープにも色々企画があり画像のように巾も8ミリ〜20ミリ位まであるし､､､
巾が変わればイメージも変わるし､､､

う〜ん、う〜ん、、、困った！困った！！

■　問題点２：チェンジポケットの位置をどう見せる？　■

も一つ問題があるのは、チェンジポケットなどの雰囲気。
ご要望は画像のようなチェンジポケットの位置を下げ、更に脇に少し移動させたようなバランスのチェンジハッキング。

通常、仮縫いの際、ポケットの位置は画像内指先のように「キリビ」というしつけ糸で簡単にしか表現しないですし、これでどうやってＩさんに分かってもらうか？です。
こんなんじゃ、出来上がりのイメージ分かりませんよね、、、

う〜ん、う〜ん、、、困った！困った！！

■　解決策　〜 仮縫いはこうしました 〜　■

さて、そんな困りごとだらけの今回のオーダーでしたが、本当に深刻に悩んでいたかというと実はそうではありません。
私だってプロですから､､､打開策は既に考えていました。

それは･･･　じゃ〜ん！　こんな仮縫いを作ったのです！！

■　そして仮縫いに･･･　■

こうして準備万端で仮縫いに臨みました。
これならフルオーダー初挑戦のＩさんも何となくイメージが分かるでしょう。
でも、実際仮縫いをしてみると、Ｉさんお若いだけに筋肉がしっかり付いていて色々と大変でした。。。

それは例えばこんな所･･･

〜胸の厚みから来る衿の浮き〜
Ｉさんは基本的には細い身体つきでしたが、細いながらも筋肉がしっかり付いていて、このため衿に浮きが出ていました。（画像内ピンクで囲った部分が“浮き”の部分です。）

フルオーダーではこれはイケマセン！（もちろんイージーオーダーでもですが､､､）
そこでこの辺は補正することに...

■　仮縫いが終わって･･･　■

仮縫いは普通は１時間でお釣りが来るのですが、Ｉさんの場合は本来の仮縫い（体型的な調整）以外にも、ディテールの確認や諸々の要望事項を聞いていると、時間を大幅にオーバーしてしまい､､､ たっぷり１時間半掛けてしまいました。
きっとＩさんも疲れたでしょう。

でも、こちらとしてもやるだけやった！...という感じで、Ｉさんのオーダーは普通に仮縫いをしただけではきっとＩさん自身出来上がりをイメージできなかったでしょうし、私達もイメージが出来ず希望通りのお仕立てが出来なかったと思います。
ですから手間は掛かりましたがお互いのため良かったのではないでしょうか。

でも、一方の当事者Ｉさんの方は仮縫いをどう思われたのでしょうか？
初めての仮縫いで、こんなハズじゃなかった･･･なんて思われたら私も辛いところです。
フォローのメールでも入れようかな？どうしようかな？と悩んでいたところ、逆にＩさんからこんなメールを頂いてしまいました。

08.02.18　件名：土曜日は有り難うございました。 吉村　様 お世話になっております。 土曜日はご予約で一杯のなか仮縫いにかなりのお時間を頂いてしまい、そして親切丁寧なご対応ありがとうございました。 初めての仮縫いを体験し胸躍り世界で一着だけの自分だけのスーツを作るというのは一種の快感ですね。 （特に吉井さんの笑顔がとても素敵でした。） 早速のご相談で申し訳ありませんが ・パンツの裾なのですが モーニングカットをオススメ頂いたのですが初めての形で気になることがあります. それは特徴である、（前裾のたるみが減り、前折り目が真っ直ぐきれいに出る）ことが電車やイスに座った際に靴下が見えすぎてしまわないかと言う点です。 よく、座っている方で、スネ毛が見えてしまっているサラリーマンを目にすることがありそれを気にして今まで座った状態を基に裾の丈を決めていました。 パンツの前面に、クッションがあるより折り目がきれいに出た方が宜しいですか世間的に（コレクションでも）1〜2クッションが多く見受けられるので。 ・仮縫い後の帰路の途中にふらっと入った生地屋さんでマーチャント系のスキャバルのSUPER100'Sで青みのかかったグレーのチェック生地3.2mを見つけたのですが4割引きで\38000ほどでしたこれはお得ですか？あまり取り扱われない色柄でしたので。 ・今後の参考に 最近ポールスミスで襟、フラップ、袖の縁に４?oほどの同じ生地を反転させたような（裏地？）を技法を目にします。 こういうものは可能なのですか？　添付の画像は依頼時に送りました襟と同形だと思いますが内側にその技法が使われています。 以上 お忙しい中、申し訳ありませんが宜しくお願い致します。

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