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スーツを長く着るために・・・ |
楽しかったGWも終わり、しばらく国民の祝日はなくなり寂しくなりますが皆さんいかがお過ごしですか?
ようやく初夏の陽気が多くなり、これで梅雨が過ぎればアッという間に夏になります。 日本の四季は早いものですね... さて、 今月は季節が変わったという事もありますのでこのタイミングでのホットな話題としてスーツのメンテナンスについて皆さんにご紹介したいと思います。 メンテナンスというと、「また水洗いネタかい?」と笑われてしまうので、今回はちょっと時代を考えた高尚な(?)話題作りをしてみたいと思います。 皆さん、今の時代あるいはこれからの時代ファッション業界として考えなくてはいけないことは何だと思いますか? 当店では最近社内の打ち合わせでこんな事↑が話題になりました。 |
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業界業界によってそれぞれ事情が違うので補足しますと個別にはこんな意見が出ました。
加えてオーダー業界は、1着1着生地を切って使っている以上、製造上の無駄はアパレル業界以上で、日々地球に厳しいことをしていると言っても過言ではありません。 それではどんなことをすれば良いか? 例えば、残り布を使ってパッチワークのクッションや布製鞄を作ってみては、、、ということが考えられました。 またお仕立したスーツ1着1着長く着て頂ける環境作りをすべきではないか?という意見も出ました。
私達の業界でも、原毛も副素材(ポリエステル、キュプラetc)も今年も!しっかり値上がりしていますし、この調子でいくと縫製工賃も、運送費用も上昇する懸念があります。 ということは、、、それが製品単価に反映しなくてはいけない時代も近い?ということです。 それでは顧客離れが起きます、、、よね? ですからこうならない努力をしなくてはいけません。
そしてこれはそろそろ日本の消費者がスーツ1着に対して手が出せなくなる金額(1着10万円と私は見ています)に近づいてきています。 それ故、そろそろインポート商品ばかりをオススメするのは良くないのではないかと考えるようになりました。 う〜ん、非常にネガティブな意見ばかりが出てきました××× それではオーダースーツ業界はこれから苦境に陥る? そうとも思えますが、それでは生き残っていくことは出来ませんので、自分達の身体を時代に合わせて変えていかなくてはいけません。 そこで、(前置きが長くなりましたが)今月はこれからのテーラーはこんな事も仕事にしなくてはいけないと考え、スーツのメンテナンスPart.2として裏地の張り替えを紹介したいと思います。 ご登場いただくのはリピーターのSさん かれこれ4〜5年のお付き合いのお客様です。 はじめは、今シーズンのご注文が終わった後のこんなコメントから始まります。 |
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読者の皆さん、如何でしょうか? 愛着あるスーツ(コート)などの裏地が破れて、みっともなくて廃棄してしまった、、、なんて経験、誰でも一度や二度ぐらいはあるのではないでしょうか? 特に当店では着心地を優先して肌触りの良いキュプラ100%の素材を多用していますから、 肌触りが良い = 柔らかい → 摩擦で摩耗しやすい となり時々、裏地破れのご相談を頂くことがあります。 表地の方はいつもオススメしているスーツの水洗いである程度復元できるとして、でも裏地などが物理的に傷んでしまったら.... そんな時、皆さんならどうしますか? そこで、まずはどうして裏地が破れるのか? どうすればこうならないように出来るのか? そして、こうなってしまったらどうすれば良いかを考えてみましょう。 |
■ どうすると裏地は破れるの? ■ | |
実は、裏地破れの原因を考える時のヒントはSさんのメールにふんだんに盛り込まれていました。 それは・・・ 1.着方 ・・・ 着方を言い出すとスーツの機能性の問題にも絡みますので、ここではあまり深く掘り下げないようにしますが、車の運転などで上着を着ながら運転している人はどはどうしても運転中の動きに合わせて生地や裏地が引っ張られるため、破れやすくなります。 2.固形物の当たり ・・・ Sさんのコメント中『デュポンのライター』とありましたが、これがその最たる例ですが、固形物(特に金属製の物)が恒常的に当たっている場合、金属に裏地は勝てませんから、数シーズンでそこが摩耗してこんな風になってしまいます。 皆さんはこういうケースありませんか? 「携帯電話を一定の場所に入れ続けるクセがある。」 「自分の革財布の四隅に金属が付いている。」 「トランシーバーなどの固形物を腰に付けなくてはいけない。」などなど... こういった物が特定の場所に当たり続けると裏地はどうしても傷んでしまうのです。 3.連続着用 >>> 続いて、多いのが同じスーツを何日も着続けるケース。 スーツの摩耗は着用時間と比例するといっても過言ではないのですが、それが連続着用が長いと2次曲線的にスーツは早く傷みます。 やはり着たきり雀はダメですね。 その他にも、普段使いのペン差しなどもいつもペンを入れて、連続着用をしているとペン差し部分が傷んだりもします。 そこで、Sさんへはこんなお返事をいたしました。 |
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そして、待つこと数日、送られてきたスーツがこちら... | ||||
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う〜ん、画像では微妙なテカリや臭いなどが分かりませんが、Sさんにはちょっと失礼な言い回しですが、タバコ臭がきつく、食べこぼし等の汚れ(ピンを打った先の部分)も、生地の傷みも半端じゃありませんでした。 画像内ピンを打ったところは何か外的な汚れ、ボタンホールの周りもボタンの跡が分かるぐらいテカっていました。 さてさて、これをリフレッシュするのは厄介だぞ・・・と思いつつ、Sさんへ早速お返事をすることに... |
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いかがでしょうか? ここで私からSさんにご提案したことは単に裏地を交換するだけでなく、 Sさんの場合、原因(金属製ライターをタバコポケットに恒常的に入れる)がハッキリしていたので上述のような個別対応も考えました。 ・ 特定箇所の補強としては生地の織りネームを破れやすい所へ事前に張り付ける※ ・ 全体の摩耗への対処はキュプラの中でも肉厚な物を使う ...といった感じです。 ※:メーカー織ネームはメーカーによってはお付けできないケースもあります。 個別対応で、少しでも考えられる原因はなくそう!といった考えからこのように提案したのですが、いかがでしょうか? 幸いSさんの方もこれに賛同してくれて、最終的にはこのご注文はまずはフルオーダー工場で水洗い、その後イージーオーダー工場で裏地の貼り替えといった手順でリフレッシュすることになりました。 さて、 どれだけ綺麗に生まれ変わることが出来るのでしょうか? これからの時代、新しい物を売る(買う)ばかりでなくこういった視点で物を大切にすることも重要なことですね。 皆さんも、『ちょっと破れたから次!』ではなく、今ある物を大切に使ってあげてくださいね。 紙面が長くなりましたので出来上がりは次回ご紹介します。 それではまた!! |