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季節は早くも |
空の果て、入道雲がそこかしこ、言うまいと思えど今日の暑さかな。
これから1ヶ月あまり灼熱の日々が続くとは...思うだけでうんざりですね。 しかしそんな事を今更ボヤいてもどうなるものでもなし。 「心頭滅却すれば火もまた涼し」 この心意気でこれからの猛暑を乗り切りましょう! と、いうところで 大阪店では7月恒例のフルオーダー受注会が無事に盛況をもちまして終了致しました。 この暑い中、お店まで仮縫いのため足を運んで頂いたお客さま、ありがとうございました。 只今工場では皆さんの仮縫いをスーツに仕上げるべく、吉井工場長始めスタッフが額に汗してフル稼働の有様です。 皆さま仕上がりまで今しばらく楽しみにお待ち下さい。 そこで今月のお客様いらっしゃ〜いでは、そんな大阪店へお越しになられたお客様の中から、フルオーダーでは珍しいカジュアルジャケットのオーダーをされたTさんをご紹介したいと思います。 |
□ ご注文の動機は? □ | |||
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↑↑↑この部分本稿最末尾で工場長より説明します。↑↑↑
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□ ジャケットのイメージは? □ | |
Tさんの今回のイメージはカジュアルなジャケットです。 カジュアルといっても幅も広く、生地もデザインも多様ですが、仕事柄英国へ行かれる事も多く、英国風のジャケットのイメージをなんとか表現したいとのご希望で、具体的にはこんな感じでとメールと合わせ画像をお送り頂きました。 |
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拝見しましたが、タイトル通りのノーフォークタイプのジャケットのようですね。(画像はかつてのVAN社の製品のようで、これはこれでなかなかのビンテージ物です。) 正面からは分かりませんが、背中にはアクションプリーツやベルトなどもあり...とこだわり色の強いスタイルとなっています。 ただ、これでもやや簡素化されていまして、本当のノーフォークタイプは以前お仕立したHさんのこのタイプが源流のようです。 * ここで豆知識をひとつ * 「ノーフォーク」と言う名前は英国はイングランドの州名に由来していまして、 場所は?と言いますと丁度ロンドンから見れば右上方に位置し、北海を望む場所にあります。 このように、地名の由来から来る服飾用語としてはコートでお馴染みのアルスターやインバネス、毛皮のアストラカン(ロシアだそうです)、ポピュラーなところでタキシードなどがお馴染みです。 |
□ デザインの特徴は? □ | |
*襟 >>> 襟そのものは通常のノッチですが、画像では分かりにくいのですが、襟の先にタブがついています。 こちらは襟の片側にはボタンを付けて、合わせる事により寒風に首もとをさらさないよう工夫されています。 (今回は飾りということで反対側のボタンは付けないことになりました。) *ポケット >>> 胸と腰のいずれにもアウトポケットとそれに被せるフタがついてボタンで留めるようになっています。 これは実用上、なかの物が飛び出さないよう、また物もたくさん入れやすいようマチも付けて工夫した名残です。 今は実際には飛び出すほどの物は入れませんが、狩猟などでは必要な弾丸や食料などを入れておく為に使用されたようです。 *バックデザイン >>> 背中には横に縫い付けのベルトと画像のようなプリーツが背中の左右に施されています。 今は単なるデザインと化していますが、背中に余裕を加えて銃を構えた際にも手を前に出しやすいように工夫された名残です。 またヒジの裏側にエルボーパッチと呼ばれている当て布を付けるのも、山野を駆け回る為にヒジの生地を保護するのを目的として付けられます。 ノーフォークジャケットはこちら(06.06お客様ありがとう)も参考にどうぞ |
□ 生地は? □ | |||||
Tさんのご希望としては柄にも英国を彷彿するようなチェック柄をとの事で、ウインドウペインやグレンチェックなどをはじめ、色々と候補に挙げて頂きました。 ただ、夏物ではなかなかマッチした生地が見つからず、それなら秋冬物で、とのご希望となり生地をセレクト頂きました。 そこで決めて頂いたのがBL7333ゼニア社のシルクとキュプラ混紡の素材です。 一見したところ表面はハリスツイードのようにザックリした手応えに見えますが、実際はシルクが混紡されているためか洗練されたマイルドな手触りに溢れた高級素材です。 この辺、さすがゼニアといった所でしょうね。
Tさんは今回のご注文に先立ち、メールにありましたようにカントリージャケットの故郷ともいうべきアイルランドを訪問されました。 もちろん、Tさんはお仕事での出張なのですが、何と言ってもカントリージャケットの本場とあって今回のフルオーダーの参考にするべく現地では色々なショップを覗かれ、ジャケットを興味深くご覧になられたと言うことでした。 特に今回のノーフォークスタイルは現地ではお馴染みのスタイルで、アイルランドのお店の至るところで店頭を飾っていたようなのですが、肝心の用いられている素材の手触りがいずれも余りにもガシガシと粗いと言うことで、いまいち食指も動かなかったとの事でした。 アクションプリーツなども付いていますので、狩猟や乗馬用の作業着として着られる為、素材感も本来はハリスツイードなどのワイルドな風合いが正統派だろうとは思いますが、もう少し素材に着心地と洗練さを求められた結果今回の素材ということになりました。 仕上がりはじっくりとお仕立てをとのご意向もありますので、秋まで掛かってお仕立てしたいと思いますので、仕上がりをお楽しみにしていただければと思います。
T様、大阪では長時間の仮縫いを有難うございました。 仮縫いで印象的だったことを少し書かせていただきますと・・・ T様の仮縫いでは、清水氏が少しご紹介したように若い頃、ボクシングをしていたためか背中(肩胛骨の上)の肉付きが良く、補正が大変でした。
青線のように、右肩が左肩に対して大きく下がっておりますし、画像内の赤丸印のように左肩胛骨上が非常に張っていました。 右利きの方でこれだけ左の肩胛骨が張っている人にはお会いしたことがありませんので話を伺ってみますと、 何でもボクシングでは利き腕でストレートは打つけれど、一番頻繁に手を出すのはジャブで、それは利き腕でない左腕からだそう、このため筋肉としては左肩の方が厚くなるのだそうです。 ・・・よく剣道をやっている方は左右で胸板の厚さが大きく違うことなどは時折ありますが、ボクサーの場合はこうなのか、、、と今回は改めて感心しました。 こういったケース、 フルオーダーでは肩線をそれぞれ一旦外して身体に合わせた後、ピンで止め直します。 左右で胸の厚みが違うと言うことは、胸や背中の肉付きが違う分、左右で長さを調整してあげないとボタンとボタンホールがずれてしまいますからね。 これが仮縫い付きオーダーの醍醐味でもありますので出来上がりの時はこういった点も是非意識して比較してみてください。(工場長吉井より) |