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お正月は和装で。 |
読者の皆さん明けましておめでとうございます。
今年も無事スタートしましたが皆さんはどんなお正月をお過ごしでしたか? 私共は創業125年というめでたい一年でありつつ、私個人は本厄で、お店はどちらに転ぶか分からりませんが、とにもかくにも今年も1年頑張りますのでどうぞ宜しくお願いいたします。 それでは早速新年第1号のお客様をご紹介しましょう。 今月はお正月ですから、これまでとちょっと変わって和装に合わすコート(外套)をご紹介しましょう。 ご登場いただくのはSさん。 実は2002年からかれこれ8年おつき合い頂いているお客様です。 でも、それほどスーツのオーダーが多かったという訳ではなく、細々とそれでも長〜くおつき合い頂いてきたお客様です。 ・・・というのも実はSさん、和装が大好きでスーツは仕事で必要な時しか着ないためスーツとしてのおつき合いは余り多くなかったのです。(加えて仕事柄毎日スーツを着るという仕事ではありませんでした。) そんなSさんから久しぶりのご相談メールを頂いたのは11月の半ば。 こんなご相談メールから始まりました。 |
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Sさん、こちらこそご無沙汰しておりました! そういえば、昔、まだ荒井君がいた頃、その頃はまだ当社にはハンドメイドのラインがありませんでしたから、変わったご注文に対し、ご対応できなかったことがありましたね... あの頃、確か神田にある某テーラーさんでしかインバネスやとんびが出来ず、寡占状態で凄く高い値段だったのをよく覚えています。 Sさん、あの頃からず〜っと想っていて下さってありがとうございます。 ところで、メールの中で出てきた「インバネス(コート)」とか「とんび」って読者の皆さんご存じでしょうか? 簡単に説明しますとこんなコート(外套)を言います。 □ インバネスコート □ インバネスコートとは大正時代に日本のファッションが和装から洋装に変わりつつある時代に流行ったデザインのコートです。 特徴としては、ステンカラーコートやチェスターフィールドのコートをベースに、肩から ケープを巻いたような、重厚感あるコートです。 ケープがあるだけで背中周りがぐっと暖かく、防寒性に優れいています。 そして、こちらがその実物。 昨冬Webでも紹介した私(吉村)の私物で、三久服装で製品化した第1号です。 |
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□ と ん び □ 一方で、洋装向けのコートではなく、完全な和装向けの外套に当たるのが「とんび」 今回ご注文いただいたのはこちらのデザインです。 和装は洋装と比べ、袂(たもと:袖)が深い(太い)ため、通常のコートですと袖が通りません。 そこで、袖を付けずに脇を大きく取り(つまりある種のノースリーブ)、一方で肩から手首までの長さでケープを首から巻くようにした物を「とんび」と言います。 ちょうどこんなデザインの物をいいます。 ポイントは袖がない分、インバネスより長目に取ったケープと、裾が長い和服に合わせて着丈もタップリ長目にとっているところです。 さて こんな洋装の世界とは全く違う世界の外套ですが、昔の当社は工場縫製のイージーオーダーだけでしたから工場の持っていないパターンはどうにもこうにもお仕立できなかったのですが、その後、当社も型紙から起こすハンドメイド工場を傘下に持てるようになり、大抵の物が見本服さえあれば縫えるようになりました。 そしてまた、別途とんびについても同時進行でアドバイスして下さる方がいらっしゃいまして... 何とか一歩ずつ前に進めるようになってきました。 そこでSさんへはこんなお返事をいたしました。 |
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ホント、ありがたい話です。 根気強くお待ちいただいたSさんにも感謝ですが、本稿では登場しませんがご自身の「とんび」を貸してくださると仰って下さった別のお客様(こちらもSさんですが、、、) こういったお客様からのアドバイスやご協力でもって当店は新しい型紙を起こし、そこから新商品開発が始まるのです。 ご協力いただいたお客様へは直接金銭的なお礼は出来ませんが、気持ちだけでもお返ししようということで、大抵の場合はハンドメイド工場で水洗いなどのメンテナンスを施し、お返しいたします。 さて そうこうしている内にまたSさんからお返事が参りました。 どうやらSさんも別途「とんび」をお持ちのようです。 これも有り難い!見本服は1枚より2枚、沢山あった方が尚良しです。 |
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こうして、Sさんは11月の半ばお祖父様の「とんび」をご持参され、オーダーされました。
お選びになった生地はハリスツイードの白黒ヘリンボーン。 これなら汎用性の利く素材感&色柄ですから和装用の外套でもバッチリです。 ちなみに、慣れない方も多いと思いますが、和装用の外套なら色柄は、黒無地、グレイ無地、ベージュ(ブラウン)無地、ホームスパン系、シルク系の素材が合わせ易くて良いと思います。 □ 問題発生! □ でも、ご注文段階で一つ問題が発生。 何かというとそれは、、、 お腹周りのゆとり量 です。 どういう事かというと、和装の場合、洋装と違って和服自体がかなり重ね着をするためにお腹周りがでっぷりしていますので、スーツのゆとり量よりもずっと大きく仕立てないと、ダメなんです。 さてさて、どれ位ゆとり量を入れるべきものか??? 非常に悩んだところですが、こういった時仮縫いを入れて頂けると後々の調整がたやすくなりますので非常に助かります。 今回は仮縫いをしますので暫定的にスーツのゆとり量+10cmでお腹周りを仕立てることにいたしました。 □ とんびの仮縫い □ それではどんな仮縫いになったのでしょうか? 中島氏もとんびは初挑戦のようで、事前に和装関係のお知り合いに色々と聞いて、下準備してきましたので万全でしたが、さてさてどんな仮縫いでしょうか? 〜 はじめは・・・ 〜 Sさんには先述のゆとり量の問題がありましたから仮縫いには和服姿でお越し頂きました。 そして、まずはお祖父様の黒のとんびを着ていただいて、雰囲気の確認。 でも、これですとSさんの方がグンと恰幅が良いためお腹周りが不足してNG。 ・・・こんな所をお互いに確認し合って、次はいざご注文分の仮縫いに入ります。 |
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仮縫いの段階では少々このヒラヒラ(フレア)が強すぎたので右画像のように少し摘みました。 さて、こうして仮縫いをいたしました「和装とんび」さてさてどんな仕上がりになるでしょうか? 次回仕上がりはスーツの世界観にはない和テイストになります。 和装ファンのみならず和服を持っていない方でも楽しめると思いますのでどうぞお楽しみに〜 |