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Mr,Colesからの贈り物 |
日に日に秋深まる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回久しぶりにHPに登場しますワタクシ北ですが、今後も定期的にホームページの情報を更新してまいりますので、楽しみにして頂ければ嬉しい限りです。 さて、クールビズ期間も先月末に終わり、暦を見れば10月も1週間を過ぎて、少しずつ気温も下がって来ました。 最低気温が20度前後の日も増え、久しぶりに上着を羽織りスーツ姿に戻る方が多い頃なのではないでしょうか? 秋といえば、お洒落なジャケットやカジュアルなコートを着たりと装いが楽しくなる季節でもありますよね。 ファッションの秋とも言われる中、ミリタリーファッションに造詣のあるKさんからメールを頂きました。 Kさんと言えば、昔からご贔屓頂いておりまして、以前もホームページでご紹介し、その時は、ミリタリージャケットを型抜きして、お仕立てした事があります。 |
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Pコートとは、19世紀前半にオランダでピィエッケルと呼ばれていたジャケットがイギリス海軍で艦上用の防寒着として採用され、元々海軍で着用されていたリーファージャケットと呼ばれるダブル仕立てのジャケットと融合したのが始まりです。 リーファージャケットはデザイン的にはピークドラペルにダーツが無いボックス型で6ボタンの一枚仕立て。 素材は、紡毛織物で色は濃紺。 腰ポケットは普通のフラップ付きといったところが特徴です。 一方現在のPコートと言うと、アルスターカラーにセンターベント。 身頃にはマフポケットと呼ばれる縦型のポケット、袖口はタブが付き、ボタンは黒い煉りボタンです。 Kさんは、先述通り125周年企画の生地を使用したフルオーダーのご注文も頂いておりますので、仮縫い日のご来店日までに生地を探さねばなりません。 急いで生地倉庫を探索すると、何とかお気に召して頂けるのではないかという厚手の生地が見つかりました。フゥー、重かった。 今回生地倉庫から引っ張り出してきたのは、画像の上から順に以下3点です。 |
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□■□ 生地は・・・ □■□ 品番 :LW07070(黒ダイヤゴナル地) 素材 :ウール90%、ナイロン7%、アンゴラ3% コート価格:43,000円 品番 :LW06001 素材 :ウール35%、アンゴラ65%(黒モッサー地) コート価格:63,000円 品番 :15650−1(濃紺メルトン地) 素材 :ウール100% コート価格:53,000円 上記価格に型抜き仕立てで15,000円プラス。 この中でオススメなのが、やはり3番目のメルトン地でしょう。 |
メルトンとは、粗めに織り上げた生地に対して、熱と湿気で糸組織を縮ませ、更に圧力を加えて出来る緻密で厚く硬い生地の事を指します。 厚手のコートは勿論の事、軍服にはよく用いられる丈夫な生地で、目が詰まっています。この中から気に入って頂ける生地があると良いのですが... そして、後日仮縫いのご来店にあわせ上記生地をご用意し、お待ちしておりましたところ、Kさんがお時間通りにお越しになられました。 その際、改めてご持参頂いた現物を拝見すると、まさに本物という言葉の似合う軍服でした。 この本物というのには色々と理由がありまして、例えば胸と袖にある階級章の跡です。 胸の階級章跡、袖に有ったであろう4本の線を鑑みると、一兵卒レベルではない事は確かです。 既製服にこうした階級章は必要ないですものね。 その他にもじっくり細かい点を見ていくと下記のような点も見つかりました。 |
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□■□ ディテールは・・・□■□ ●メタルボタン:真鍮製 ずっしりと肉厚な真鍮製のゴールドメタルボタンに模様は錨と王冠のマーク... 良いボタンだなぁとじっくり見ると裏にGIEVE'S LTD の刻印が!!! ギーヴスと言えばあのギーヴスでしょうか??? 確か軍服を作っていたとかいないとか... それに王冠といえば、英国王室がイメージされますし、これは英国海軍物なのか? う〜ん、謎ですね。 ●胴裏素材:麻 この独特の硬さと質感は、麻素材のようです。 滑りは悪いですが、リネンの特徴として丈夫さと通気性の高さがありますので、昔から裏地として用いられる事があります。 これが最近のPコートだったら、裏地は勿論ポリエステルなどの化繊ですが、こうした素材がない時代のコートだということが、想像出来ます。 ●袖裏素材:綿 袖は運動性が求められる箇所ですので、滑りが良い綿素材が向いておりますね。 ... んっ、何か右袖裏袖に文字が書いてあるような... よく見るとG.A.COLESと読みとれます。 どうやら元の持ち主はMR.COLES氏のようです。 彼はこれを着て艦隊の上で、海風から身を守っていたかと想像すると感慨深いものがあります。 Hey、Mr. Coles、君は今、一体何をしているのかい! ●ボタンホール:手穴 細いかがり方で、全てのボタンホールが手穴でした。 フロントとラペル合わせて10穴ありますので、なかなか手が込んでおります。 ●ベント:深さ10センチのサイドベンツ 通常では考えられないベントの短さで、着丈が短いというところもありますが、普通の長さだとベントがヒラヒラしてしまう事やお尻の動き易さ、甲板での風雨などを考慮すると、この短さになるのでしょうね。 |
□■□ その他・・・ □■□ その他の特徴としては、アームホールが小さく(マニカカミーチャというよりは袖付けが粗いだけのような箇所)や細腹のないダーツ仕立てで、内ポケットのモミ玉縁など随所にクラシックな仕事振りが垣間見られます。 どうもこれらを総合的に見ると、この軍服は現在のPコートとリーファージャケットとの間のジャケットではないかと想像しますが1つだけ確かな事は、この洋服はオーダーメイドであるという事です。 今回は、過去の職人VS現代の職人の腕の見せ所のようですね。 どのような出来上がりになるか...!?、乞うご期待くださ〜い。 そうそう、Kさんとのお話の中で上野の中田商店や渋谷のファントムなどミリタリーショップの名が出て来て、若かりし頃に通った事を思い出しました。 当時は『ランボー怒りのアフガン』に影響され、友達とカモフラパンツを探しましたっけねぇ・・・ そういえば、当社から秋葉原方向寄りにミリタリーショップがあるのを思い出しました。場所は次回ご紹介したいと思います。 |