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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!

 一枚仕立てのお客様
桜の花の季節も終わり、目には葉桜が優しく映る季節になりましたが皆さん4月からの新年度、如何お過ごしでしょうか?
ようやく少し落ち着き始めたところで、GWの予定が気になる時期になりましたね。

この時期になると陽ざしも強くなってきてそろそろクールビズを意識するようになりますが、今月はそんな時期に最適なジャケットとして、今シーズン当社の目玉商品“芯なし一枚仕立てジャケット”のお客様を今月はご紹介したいと思います。

お客様は上越市にお住まいのYさん。
遠くにお住まいの方ですが、高速道路1000円のお陰でちょくちょく東京まで愛車MINIでお越し頂くお客様です。
(最近1000円高速を利用して遠地から週末車でお越しになる方が多く、特需を受けています!)

さて
そんなYさんからのご注文ですが、実はYさん大変気が早く、“芯なし一枚仕立て”ジャケットの企画がまだハッキリ定まっていない2月からご相談を頂いたお客様で、まさしく新商品第1号のお客様でした。

ご相談はなんと2月から始まります。
この時期はまだWebに新商品の事は正式にアップしていない状態でしたが、ご来店時のちょっとした話や私の日記帳(←検討中の話や最新情報が多い)をお読みになって、一足早くご相談頂き、事前に試作品の生地や昨年の春夏物サンプル帳をお送りしてご検討いただいておりました。
10.02.01 件名:JKT生地のご相談
吉村さん
今日は関東でもとのこと、交通事情が心配ですがいかがでしょう?
さて、サンプルのご送付ありがとうございました。
葛利の4PLY、やばいですね。
確かに昨年の125th生地と同じ色目なんだけど、全然表情が違う!
これでセットアップもいいかも、とか考えちゃいます。
そして同じく4PLYのグレーも良いですね。

さらに、改めて見ると125th生地のグレー、これも良いですね。
昨年の特別価格の時に、紺だけじゃなくて、このグレーも作れればよかった、とため息です。
いかんせん昨年の夏前はまだ、起業3年目で厳しかったものですから・・・(^_^;)
あと、紺じゃないんですけど改めて葛利のキッドモヘア混ヘリンボーン、これもいいですね。
と、言う訳でまだ漠然としていますが、今浮かんでる生地をふるいにかける為にメールさせて頂きました。

整理すると、
   1.葛利4PLY(紺) G6061 今年の4プライ
   2.葛利4PLY(灰) G6062    〃
   3.125th生地(灰) G3001 今年の3プライ
   4.スキャバル(紺) G3106
   5.葛利杉綾(灰) G3069
   6.葛利杉綾(茶) G3070 昨年話題だった玉虫色の生地
のいずれか。セットアップで上下1着か、JKTのみにしようかと考えています。

あと、この4PLY生地はお幾らの設定をされるんでしょう?
正直この生地、ヤバイです!と言うか、どの生地もヤバイですが(笑
って、すみません、とりとめも無い相談ですが、どうぞよろしくお願い致します。

出張からお帰りになられてからで結構ですので、しばらくお付き合い下さい。
(上越市 Y)

上越?SHOPMASTERより一言・ ・ ・

Yさん、沢山候補を挙げて頂きありがとうございます。
特に葛利毛織がお気に入りのようですね...
葛利さんは、国内では中小メーカーですが中小でなければ出来ない凝った素材感、上質な物を比較的廉価に作ってくれる大変良いメーカーです。
古〜い織機を大切に、大切に使い、高速織機全盛の中、低速で頑張っている数少ないメーカーです。
そんな葛利さんには昨年の創業125周年記念反として3プライ(一本の糸を3本の細い糸で撚った物)の生地を、そして今年は4プライ(同様に4本で1本の糸)の生地を当社専用で織って貰いましたが、今年のクオリティーは昨年以上に素晴らしく、通常3本の物を4本で撚れば出来上がった糸は太くゴツゴツする素材感なのに、しなやかで上質な仕上がりになっているのが特徴です。
サンプル帳をお持ちの方はP.14を参照下さい。

さて
話を戻しまして、芯なし一枚仕立てジャケットの話に戻りますが、この一枚仕立てジャケット、実はこれまでの当社にはないような企画で考えられております。

それは何かと言いますと・・・
今回の芯なしジャケットは当社としては初めての試みとして、
お客様にデザインのご要望を伺うことを最優先とせず、
作り手が考えたイメージ、デザインを極力崩さない形で
お客様に着て頂く
・・・ことを重視しているのです。
つまり、 これは“オーダースーツはお客様の要望を十分伺い、それを製品化するのが仕事”と考えていた従来の当社とは一線を画した考え方で、さながらボリオリが独自のイメージでドーバーを開発しそれを製品として販売するのと同じ考えなのです。
そしてこれには、MD玉岡氏の存在が欠かせず、アパレルでオリジナル製品を開発していた彼のキャリアがここに生きているのです。

どんなところが具体的に違うのか?というと・・・
 〜〜〜 芯なし一枚仕立てのイメージ 〜〜〜
 軽く軽快なイメージ
  >>> 通常のスーツより肩幅狭め、着丈短め
 スッキリしたシルエットのイメージ
  >>> 身幅タイト目、アームホール小さめ、袖幅細めで、やや長目
 男の色気漂う高級感あるイメージ
  >>> 一枚仕立てであるに関わらずボリューム感を出す
    ミラノゴージ、揉み玉縁などのハンドならではのディテール
それ故、例えリピーターの方でもこれまでとは随分サイジングの違う仕上げ方になるのです。

そこで、お客様のYさんへは、この辺従来と違うコンセプトやイメージ、そこからくるサイジングの変化などをお話ししますと、早速こんなお返事を頂きました。
10.02.10 件名:新パターンに興味津々です。
吉村さん
お世話になります、上越のYです。
青森への道中及び滞在中、平穏な気候だったようで何よりですね。
かなり年齢幅の大きいパーティーで、有意義な出張であったと推察致します。

さて、いつも素早いご返信を頂きまして、ありがとうございます。
仰る通り4PLYはビジネスでも使用でき、葛利の茶はカジュアル感を出せれば、と考えています。
4PLYは出張時の移動ではジーンズにジャケットを羽織り、会議ではスーツみたいなイメージです。
吉村さんご推薦の新パターン』とは三久服装さんのWEBで紹介されていたものですね??
非常に興味を惹かれます。
従来のパターンとどのくらい違うのか、その辺り凄く興味があります。
興味ついでにお伺い致しますが、この新パターンはイタリアの南部 or 北部いずれを標榜してらっしゃるのでしょうか?
想像するに南部だと思うのですが『ミラノゴージ』との記載に『??』と思ったものですから(汗
ミラノゴージも遊び心で加えられますよ!って感じの認識でいいんでしょうか?

あと、ボタンですがおススメがあれば教えて下さい。
ナット?水牛?黒蝶貝?それとも・・・? (上越市 Y))

東京SHOPMASTERより一言・ ・ ・

メールを頂いたのは2月の上旬。
この企画がまだ正式には決まっていなかったのですが、私共も数多い選択肢の中からお客様のニーズを見極めていたところでYさんの意見は色々と役に立ちました。
  > 4PLYは出張時の移動ではジーンズにジャケットを羽織り、
  > 会議ではスーツみたいなイメージです。


まさに私共も同様のイメージで考えておりました。
最近はクールビズが多様化する中でニットジャケットなどの人気があるのもこういったビジネスのカジュアル化が底流にあるからに他なりません。
ミラノゴージは確かにご愛敬かも知れませんね。
でも、この微妙なカーブ、やりすぎると珍妙になるし、不足すると気付いて貰えないため、たったこれだけのことでも随分大変だったんですよ、、、

こうして、Yさんの新企画ジャケット第1号はご注文となりましたが、折角ご注文頂きましたのでサイズ面でこれまでの上着とサイズ面でどんなところに違いがあるかご紹介しましょう。
ホントはこれにパターン上の問題(原型としてのコンセプト)が加わりますが、これについては先日玉岡氏が新着情報で紹介していましたのでここでは割愛します。
    ご参考:1003 三久新企画「一枚仕立てジャケット」

□  サイズ面の違い  □
サイズ面の違いはお好みもあるため一概には言えませんが、一般論として次のように考えてお仕立しています。

1.肩パッドがなくなることに関して
・・・ 今回のジャケットはカジュアルテイストを出すこともあり肩パッド無しのお仕立です。
『肩パッドがなくなる』ということは、肩幅に袖丈をプラスした裄丈(ゆきたけ)で考えますと肩パッドの厚み相当が不要になります。

それをどうするか?
これはお客様のご体型を見ながら 裄丈で−1.0cm程度短くします。
※:肩パッドの厚みはご体型により差を付けていますから一概に-1.0cmと言い切ることは出来ません。

画像を交えて少々詳しく説明しますと感じです。


画像上段左が肩パッドを通常通り入れたスーツの上着、そして右が今回の芯なしのジャケット。
上段の画像をご覧いただくと、肩パッドの厚みがどれだけあるかお分かりになると思います。
それが、下の画像を見ると、肩パッドがなくなった割に意外と肩先の位置が下がっていないのにお気づきになろうかと思います。
これは肩幅その物を少し詰めて、肩が上がっているからこうなるのです。
これが肩幅が同じだと肩先がずり下がっているように見えてしまいます。

2.袖丈について
・・・ 一方で袖だけを単独で考えてみますと、スーツと比べジャケットはドレッシーさが重要ですので、スラッと長い袖のイメージを出すため
  袖丈は原則+0.5cm程度長目にします。
※:最終的には1.2.を合わせ肩幅で-0.5cmぐらい、袖丈は±ゼロといった感じになります。

3.身幅(ウエスト)は
・・・ジャケットはスーツと比べ財布や手帳などを入れる等実用的な面は少なくなりますから、お腹周りは原則ボタン1つ分2〜3cmほどタイトにします。

4.上着丈について
・・・今回のジャケットは単品使用がベースとなりますので、上下別々に着て格好良くするためには、上着丈は短くなければいけません。
(なぜならJKT単品はスーツと比べ上着の丈(裾)は胴と足の境目となり、スーツの丈と同じだと短足に見えてしまうからです。)
 そこで標準的な着丈に対して−2.0cm程度短くします。
※:もちろんリピーターの方など比較するスーツそのもののサイズにお客様の好みが反映されているため一概に↑の数値が当てはまる訳ではありません。
これらが基準となりサイズスペックを作っています。

さてさて
Yさんのジャケット、どんな仕上がりになるのでしょうか?

読者の皆さんも、リピーターだからいつもサイズは一緒というのではなく、スーツ・ジャケットの用途やブランドのイメージ等でサイズがどう変わってくるか、また僅か5ミリから10ミリの違いで洋服のイメージがどれだけ変わるか考えてみる良い機会だと思います。

出来上がりどうぞお楽しみに!