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憧れのチャーチル氏 |
日に日に春の陽気が強くなり、桜の花
が見頃となってきましたが、読者の皆さんはいかがお過ごしですか。
見応え、ついでに飲み応え?も充分でしたよ。 さて、桜の頃と言えば、入学、入社や年度始めで何かと期待が膨らむ季節ですが... 見事、一発で大学受験に合格して4月からの新たな学校生活を楽しみにしているM君から、合格のご褒美に、憧れのチャーチル元英首相が着用している様なディレクターズスーツを作って4月の入学式に出席したいと、下記のメールが届きました。 |
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何とも純真な青年の気持ちがヒシヒシと伝わってくる、爽やかなメッセージじゃないですか。 この願いを叶えるべく直ぐさま返事をしました。 ただ、M君の希望を叶えるにはイージーオーダーでは困難なディテールも多く、要件を満たすにはフルオーダーの方が良いし、予算や納期の点を考えると懐に優しく出来上がりが早いイージーオーダーの方が良いし、一応両方のご紹介をしてM君(ご両親)に選択を委ねました。 早速返事が届いて見てみると、フルオーダーを前提に進めたいとのことで時間の制約もある為、M君は早々に、なんと!高崎からお父上の運転する車でやって来てくれました。 ロングヘアーをポニースタイルにして、お祖父様から譲り受けたビンテージなジャケットを纏った姿は、物静かで繊細なクリエーターの様で、ルックスだけで無く語り口からも優しいデリケートなキャラクターが伝わってきます。 いざ打ち合わせが始まると、チャーチル仕様のディレクターズスーツへの強い拘りから、是非とも写真の服を再現したいという強い希望が有って、詳細に対応できるフルオーダーで作ることに決定。 拘りの一端をご紹介しますと... ジャケットでは、ラペルのゴージラインやラペルの形、フロントカットの微妙なサイジング、腰ポケットの位置、ベストのやはり前裾のピークラインの形、パンツのハイバックデザイン等々... まずは生地選びでは、チャーチル元首相の写真を頼りに再現という大前提が有るので、悩み抜いてアンティークな児玉毛織のドスキン、コールパンツも用意して来た沢山の写真とにらめっこしながら色柄の一番近い児玉毛織のストライプ生地、シャツはすんなりオススメしたトーマスメイソンのブロード、で決定しました。 それでは肝心のオーダー内容ですが、こちらです。 |
2週間後の仮縫い当日、、、 再び父上の運転する車で、約束より30分はやい9時半にM君がやって来ました。 M君「おはようございます。少し早く来てしまいました。大丈夫ですか?」 玉岡「おはようございます。お父上もお骨折りでご苦労様です。まだ、先約の方が仮縫いを行っていますのでその間、デザインの確認をしましょう。」 M君、仮縫いされた自分のディレクターズスーツを見たり、触ったり、ひっくり返したりと興味津々。 一通りご注文の確認をした後、さぁ、仮縫いの着せ付けと補正のスタートです。 まずはパンツに足を入れて、拘りポイント(1)股上の深さをサスペンダーをつけて確認、次にゆったり目を希望した太さ、長めの股下を改めて修正しました。 |
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拘りポイント(3)ラペルとゴージ位置ではその場で部分型紙を中島氏に作ってもらい、M君の納得行くまで上げたり下げたりで調整、同じく腰ポケットの位置でもどれぐらい写真のチャーチルさんに近づけられるか右や左へずらしつつ収まるところの収まりほぼ定位置です。 一番の拘りポイント(4)フロントカットでは仮縫い服のカッタウェイよりもう少しカーブを浅くしたいとの希望で、これも部分型紙をその場で中島氏が作成して了解を貰うと言う一連の仮縫いが終わりました。 ご来店時からここまで約2時間、濃い仮縫いでした。 M君とお父上を入り口で見送ると、ほっとするのもつかの間、着用予定の日が迫っているだけに、直ぐに中島氏に補正を加えて貰い、後は三久工場で縫製して仕上がってくるのを待つことに。 今回のオーダーは極めてシンプルなフォーマルスリーピースだったのですが、シンプルなだけに完成度も高いため、1cmのサイズ変更でも微妙に表情が変わるのを強く感じた次第です。海底に積もる砂の堆積のように少しずつ少しずつ変化してるんです。 それではM君、歴史が沢山詰まったディレクターズスーツの出来上がりを楽しみに待ってて下さいね。 |