オーダースーツのヨシムラ >> お客様いらっしゃい >> 渋いスーツ???
2016年9月29日更新
全くお彼岸も過ぎたというのに、このオオサカの蒸し暑さはいったいどうなっているのでしょうね。
原稿作成している今日(9/26)も最高気温が30℃!
(ちなみに明日の27日は私の46回目の誕生日です)
しかし、今年は11月頃から急に寒くなるらしいので、特にコートのオーダーをご検討されていらっしゃる方は急がないと間に合わなくなりますよ。
猛暑の年の冬は厳しい寒さになりますから、早目のご用意をお薦めします。
カシミアコートだけで5着も持っている大阪店ShopMaster_南浦です。
さて今回は私の友人Sのオーダーをご紹介させて頂きますが、このS、とある企業の企画営業部長という役職で、いつも飲みに行く度に仕事の内容を説明してくれるのですが、その説明が全く的を得ず、未だにさっぱりわからない,,,,
ただ海外(欧州)に出張に行くことが多く、いつもオーダーする時のコンセプトは“外国人が%$#&しそうなスーツ”とだけ言い、私に丸投げしてくる非常に面倒くさいお客様???でもあります。
そのSが先日来店し、スーツを注文をしてくれたのは良いのですが,,,,
S:“11月にドイツに行くから、ドイツ人が渋いと思うスーツを作って。サイズは前のままでいいから” 私:“ドイツ人が渋いって思うスーツって,,,,俺ドイツ人違うし分からんわ” S:“お前プロやろ?ドイツ人になりきって考えろ” 私:“イタコじゃあるまいし、俺は人になりきるプロ違うっちゅーねん!” S:“まぁ、取り敢えず頼んだで、因みに今までのスーツはばっちりコンセプトに合ってるし、気に入って着てるから” |
こんな漫才のようなやりとりがあり、さっさとSは帰っていったのですが、まぁ褒められればすぐに調子に乗る私ですから、ドイツ人が渋いと思うかどうかは別として、Sにはドイツで気分よく仕事をしてもらおうと、次のような内容で仕立てることになりました。
Sはマニカ好きで、今回生地がイタリアのロロピアーナですから、これまでと同様のデザインにしようかと考えましたが、向こう(ドイツ)でちょっとしたパーティがあるらしく、マニカではいささかカジュアル過ぎるかとことで、今回は通常のセットインスリーブで行くことにしました。
■基本デザイン・・・・シングル3B段返り
3B段返りはアメリカのブルックスブラザーズが考え出したデザインです。
そのデザインが何故イタリアスタイルに?と申しますと、テーラーリングの伝承の為、当時アメリカにはイタリアからの職人が数多く居りました。
そのイタリア人職人がこの3B段返りを本国に持ち帰り、根付いたとされております。
その証拠に英国のサヴィルロウでは3B段返りのデザインは存在致しません。
■ラペルデザイン・・・・セミノッチドラペル
いつもはベーシックなノッチドラペルですが、今回は少し変化を付けてセミノッチで。
■ベント・・・・サイドベンツ
■胸ポケット・・・・バルカ
バルかポケットもイタリア発のデザインです。
ポケットの下底を曲線状にし、胸の丸みを強調する意味合いがあります。
■腰ポケット・・・・ハッキングポケット
別名スラントポケットとも言います。
元来、手を入れやすい様に角度を付けたのが始まりですが、意味合いとしてはウエストシェイプを視覚的に強調する効果があります。
■袖仕様・・・・本切羽4B重ね
ボタンを重ねることにより腕が長く見える意匠です。
このような発想が出来るのはイタリア人ならではですね。
■前タック・・・・ノータック
トレンドを意識したブランドでは1タックか2タックが主流になってきております。
ただプリーツ入パンツが現在のノータックのような主流になるまでにはもう少し時間が掛かるでしょう。
■サイドポケット・・・・ストレート
■ピスポケット・・・・両玉縁左右ボタン留
■裾仕様・・・・ダブル4.5cm巾 糸留
上記はSのリクエストというよりかは、私南浦のお薦め仕様となっております。
以上が今回友人のSより丸投げされたオーダーの内容となります。
今回のポイントはまず1つ目がファッション雑誌等ではクラシック回帰というキーワードがよく見受けられますが、それはなにもブリティッシュに限ったことではなく、イタリアスタイルの定番である“マローネ・エ・アズーロ”なスーツも同様であるということ。
もう一つは、このS、付き合いが長いので何を考えているかはほぼ分かっているのですが、自分で生地やデザインを選んでしまうと、同じような物ばかりになってしまうことがどうやら嫌らしく、完全にプロに任せた方がワードローブの幅も広がるし、自分では思いつかない着こなしが出来ることを秘かに楽しんでいるようです。
それだけ私の事を信じてくれている証左だと思いますが、Sのような考え方もある意味オーダーならではの醍醐味と言えるでしょう。
まぁSには気に入ってもらえるようにカッコ良く仕立てたいと思います。