服地の本場大阪谷町で生まれ、東京神田の生地屋街で育ち...はや

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お客様いらっしゃい

2017年5月23日更新

It`s 30'S Style!!!

皆さんこんにちは。ゴールデンウィークも終わり一息付いてると、
気付けば、COOL BIZが始まり、僕たち仕立て屋にとっては、いや〜な季節が近づいてきました……

何故かは皆さんもちろんご存知でしょう。

そう、スーツの需要が減ってしまう……

確かに暑くて着れなく、というか、着たくなくなる。
かくいう僕も暑いのは本当苦手です。

しかし、暑いは暑いでも、
今回のタイトル「30'S Style」を見て熱くなってしまうなら全然オッケーな方!
もちろんいらっしゃいますよね!?

僕も、もちろんその内の一人!

30'S Style……そしてそんなstyleには僕の大好物、ヴィンテージ生地の出番です!

今回のお客様いらっしゃいは、30’S Style ヴィンテージ生地をお探しのお客様のご紹介です。

そしてヴィンテージといえば、そう、佐野の出番!!

おっとっと…..前置きが長くなってしまいましたね。
それでは早速本編をどうぞ!

始まりは1件のメールからでした。

■□■  ご来店予約メール ■□■

measurement = スーツ採寸
shopname = 赤坂店
month = 4  day = 20  time = 17
memo = スーツ採寸していただくのは男性です。
演劇公演のための衣装で、1930年代風、3万~4万くらいで考えています。
公演が20、21日のため、5月13日にはほしいです。
監修として1930年代のスーツに詳しい方と3人で伺います。

SHOPMASTERより一言・・・

問い合わせは、ビッグヴィジョンでしたが、ビッグヴィジョンでは、生地、技術面、知識面での対応が難しく、まして、他のテーラーでもここまでピンポイントの経験のある所は少ない。
これは、ヨシムラの強みを活かせる絶好の機会です。 そこでお客様には断りを入れた上で、ビッグヴィジョンではなくヨシムラで対応することにいたしました。

そこで、返信なのですが、、、まだ新米SHOPMASTERの私、佐野が戸惑っていると……
そこで、初代SHOPMASTER吉村社長が、それを見越してかサポートしてくれました。

K様
おはようございます。ビッグヴィジョンWeb担当(吉村)です。
GWも目前となり好天が期待されますがいかがお過ごしでしょうか?
※:ビッグヴィジョン宛のメールでしたのでビッグヴィジョンとして返信しています。

昨日は珠玖(シュク)宛てにご連絡をありがとうございました。

ご相談の件、30'Sをご希望とのことで、珠玖から相談を受けたのですが、30'sは今のファッショントレンドからは外見的デザインも、使用する生地の色柄も素材感も現代とは大きくかけ離れているため、どの程度の物をK様がお求めになられているか足並みをそろえる必要があり、生地サンプルをお送りする前にご確認までご連絡差し上げました。
そこでご質問なのですが、K様の方では今回のスーツに30'Sとしての再現性をどれぐらいもたれますか?

30'Sの参考画像・URLにつきましては下記をご覧下さい。
※社外サイトです。
ここのオーナーは亡くなられましたが熱烈な30'Sスタイルファンの方によって運営されています。
私も故人とは面識がありファンでした。

http://www.the30sstyle.com/ (社外サイトです)

こちらをご覧頂くとお分かり頂けますが、30'sは昨今のコンパクトでタイトで細身のスーツと比べますと

  ・胸のボリュームが強調され
  ・ウエストが大きく絞り込まれ
  ・襟幅が太く
  ・肩も構築的
  ・ボトムは股上が非常に深く
  ・主としてサスペンダー仕様
  ・シルエットも現代と比べるとかなりゆったりした作り
になっています。

また素材感も、昨今の柔らかくて薄い素材感ではなく、
ゴワゴワした、肉厚の、芯地等も厚いがっしりした印象です。

このようなイメージで宜しいでしょうか?

だとしますと、生地等はご用意は出来ますが、お貸出し用の生地サンプルには今風の軽い生地しか掲載していないためご用意がありません
また上記のようなイメージはどこのテーラーにでも相談できるものではなくある程度経験のある者が対応しませんと良いものにはならないと思います。

この点、K様の方はどの程度の再現性のイメージなのでしょうか?
お差し支えなければお教え頂ければ幸いです。

また簡単な再現性であればご予算の範囲でお仕立てすることも可能ですが何分にも3-4万円台は海外縫製のためご希望通りのスタイルに近づけるのは難しいかも知れません。 5-6万円位のイメージでご検討頂けないでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。

簡単ですが取り急ぎご案内まで。

そして、その後、何度かメールのやり取りをして分かったことなのですが、Kさんは河田唱子さんという舞台の脚本家で、今回の舞台は1930年代が背景なのだそうです。
このため時代背景に忠実なスーツが欲しいと考え、色々Web検索の上、当社に辿り着いたとのことでした。
(実名OKとのことでしたので以下実名で書きます)

また、脚本家である河田さんは女性ということ、また1930年代のスーツに特別詳しいという訳ではないため、時代考証をしっかりする上でもアドバイザーが必要で、これには30’Sマニアの方が付いていらっしゃいました。
(それ故、いい加減なことをすると、すぐこちらの実力が見透かされてしまいます。。。)

そんなこんなでアドバイザーが背後に見え隠れする中で色々とメールでご相談いただいていたのですが、
概ね、↑でご案内したメール内容で話がまとまってきたので、次はいよいよご来店で最終決定です。


で、ご来店いただいたのは4月某日
河田さんの他に、時代考証としての30’SマニアのKさん。
そしてこのスーツを着る俳優の田中惇之君(倉田冶三郎役)の3人でお越しになられました。

最初にご挨拶をすると、、、
河田さんはメールで色々やり取りをしていたのでフレンドリーにご挨拶が出来たのですが、時代考証のKさんは明らかにこちらの力量を諮ろうとしている。。。
またモデルの田中君は、明らかにつまらなさそう。(採寸のため仕方なく来ている感じ。。。)

一方、迎え撃つ(?)当方は、私、佐野と、今回は乗りかかった船ということで初代SHOPMASTERが同席してくれることとなり2名体制。

ご相談は、初めは私たちの方からどんなニーズなのか?(舞台衣装としてどれぐらいの動きがあるか?色目・素材はどんな物を希望するか?)などを聞くところから始めました。
そうすると脚本家の河田さんもどんな舞台をイメージしているのか、私たちに伝えようと必死です。
また時代考証のKさんも、30'Sの基本イメージを当方が知っているか、ジャブを放ってきます。


SHOPMASTERのつぶやき・・・

初対面だからお互い力量を諮るのは当たり前だと思いますが、
これでお客様の期待に応えられる店かどうかが決まる訳ですからこちらも真剣です!

そうこうしている内にだんだんお互いのイメージが近寄って来ました。

イメージとしてはこんな感じでしょうか?

ピークドラペル 袖 スラックス

そして、次は、生地選び。

今回はミュージカルの舞台で使用する舞台衣装のお仕立てですから、動きや、ステージでの見栄えなどを考えるとヴィンテージのあの油が抜けたゴワゴワ感や、ベージュや茶色といった色味の問題,そしてスポットライトの暑さなどを考える必要です。
それをクリアする生地は無いものかと探していると、、、

ついに、発見!!

やはりここがヨシムラの強いところ!
周りのテーラーが持っていない生地が豊富にある。
宝探しをするように生地を選ぶ楽しさもいいところです。

そして、とうとう見つけたお宝、それがこの生地です。
(スーツだけではなく、ちゃっかりシャツとネクタイもご提案し、全てヨシムラでコーディネートさせていただきました。ありがとうございます!)

生地
JOHN GREENISH MADE IN ENGLAND VINTAGE
◇ モヘヤ60%、ウール40%(推測)


ご覧くださいこの色味。まず現代、現行の生地にはありませんよね?
色合いは、ステージ栄えする鮮やかなグリーン。
素材もモヘア混で光沢が強く、シルバーに光る色気は役柄にまさにピッタリの生地です!
あっ、役柄ですが、カタギではない派手で華があるという設定だそうです。
シャツとネクタイのコーディネートも色気のある男を演出するのには、バッチリじゃないですか?!(自画自賛です(笑)すいません)
生地とコーディネートは素晴らしいものに決まりました。

そして、ここからが一番肝心な30’S Styleのデザインです。
イラストを前掲しましたが30’Sの大きな特徴としては、

  • 胸のボリュームを強調しウエストが極端に絞り込まれた
    グラマラスでエレガントなスタイル
  • 衿幅が非常に太いこと
  • ノーベント
  • 肩は構築的で、コンケープ(肩先が弓なりに上がっている仕様)
  • スラックスは、股上が非常に深くハイバック仕様
    (ヒップの後股上のラインが上に上がっている)
  • サスペンダー仕様でベルトレス
  • パンツのシルエットはかなり太い
JOHN GREENISH MADE IN ENGLAND VINTAGE


ジャケット
  • 基本デザイン:シングル2つ釦3ピース
  • 衿デザイン:ピークトラペル 衿幅11cm (通常は8~9cm位)
  • ベント:無し
  • 肩:コンケープトショルダー
スラックス
  • タック:2タック & 深い股上
  • ピスポケット:左右フラップ付き
  • 裾口:ダブル5cm巾 (通常は3.5~4.0cm位)
  • Vカット、ハイバック仕様
  • サスペンダー釦 内×外 (フロントは内側で後ろは外に釦がつきます)
  • ウェスマン無し、ループ下り2cm
ベスト
  • タシングル5つ釦
  • 背中尾錠付き
  • ポケット4つ
  • ベスト第4釦、第5釦間にボタンホールを縦に入れる (懐中時計のチェーンを通すために開けます。)

マークがついているところが、注目ポイントです。

う〜ん、非常に書きごたえのあるデザインたちです。
一つ一つ書き漏れのないように慎重に落とし込んで仕上げていき、そして、もう一つの山場。

そう、採寸ですね!

サイジング
今回の採寸のポイントは、
  ● 30'S Styleの特徴をしっかりとサイジングまでも表現する。
  ● ミュージカル用ということで、動きも考えたサイズ。
  ● 俳優さんの体づくりに合わせた先を見据えたゆとり。


本番に合わせ体を作り込む。
3〜5kgほどビルドアップするそうで、実はそれを予想しながらの採寸、それが一番難しかったです。

そんな採寸風景を皆さんにちょっとだけお見せしちゃいますね!

しっかりとまずは、体の実寸をお測りして、
今回のポイント、
30’S Style の特徴的なサイジングをご覧あれ!

見てください!
このパンツの太さを!そして股上の深さにも注目です。
現代では、こんなスラックスのサイジングはしないですよね?!
たっぷりとゆとりを持った極太スラックス

そこに、胸周り、肩にボリュームを付けてウエストを絞り込む
エレガントなスタイルのジャケットを合わせていきます。

ここで難しかったのは、バストがかなりしっかりされていまして、
そこでさらに鍛えると言うことで、サイジングにかなり悩まされました。

ピッタリとしたボリュームのある胸周りを作るなら、やはりジャストでバストを合わせていかなければと考えていましたが、どれほどのゆとりを入れて、サイズを採っていくかをしっかりと話し合いサイズを決めていきました。

無事全て終了するとたっぷりと時間が経っていました。
楽しくって時間過ぎるのなんて全然感じなかったです。
あとは、出来上がりが本当に楽しみです!
この出来上がるまでのワクワク感を味わえるのはオーダーならではですよね!

さてさて、どんな感じでし上がってくるのか?皆さん気になりますよね?
特に30'S Styleの特徴あるデザインは言葉、文ではなく、是非見ていただきたいです。

それでは、また出来上がりましたらご紹介します!
東京SHOPMASTER 佐野 雄一

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