2019年11月8日更新
増税前の9月が猛烈に忙しく、10月に入れば落ち着くと思っていたのが、10月に入ってからの方が猛烈に忙しいという世の流れとは逆を行く大阪店ShopMaster_南浦です。 思ったほど駆け込み需要が無かったので、世は景気がよろしくないのかと思っていたのが、10月に入り例年以上に皆さまにお越し頂けたので一安心しております。 ただ何が売れているかと言いますと、年々ビジネスカジュアルが進んでいるせいで、ジャケパンの売上がかなり目立ってきましたね。 これまでスーツ2着だったのが、スーツ1着+ジャケパン1セット、といった内容に変わってきております。 またスーツ生地もこれまではオーダーらしい色柄の物から売れていくといった感じでしたが、今シーズンに限っていえば無地をお選びになられる方が非常に多い! 景気が良ければ派手な物が売れ、不景気なら長く着れる落ち着いた物が売れる、というのは我々の業界の定説ですが、不景気というよりもストライプや格子柄がもう出尽くした感があるので、原点に戻って無地が選ばれているのでは?と私は感じております。 今シーズン、オリジナルで作ったSuper140's&カシミアのスーツ地は特にお薦めです。 暖冬のせいもあって出だしはあまりよろしくなかったのですが、ここにきてブレイクしつつあります。 かなりの数量を作りこみましたが、この調子だと早々に品切れするかもしれませんので、ご興味のある方は是非お早目に!
さて、今回は普段お仕事ではスーツは全く着ないが、オフタイム用にビジネスライクでない個性的なスーツが欲しい、とのオーダーを頂いたAさんのスーツをご紹介したいと思います。 そもそも何気にネットで検索していると当店の
『この記事』
にヒットしたらしく、一度下見に来られたのですが、その際あいにく私が外出していた為、詳しいご案内が出来なかったのですが、改めて週末の土曜にご予約を頂き、私の渾身の提案をさせて頂くことになりました。 Aさんのご要望はザクッとオフタイムで着る個性的で洒落た柄のスーツが欲しい、ということで生地の色柄等はまだ決まっておりませんでした。 その上で色毎に与えるイメージ、ネイビーは爽やかさ、ブラックはフォーマル感を、グレーは重厚感や落ち着きを、ブラウンはカジュアル感を,,,,といったことをご説明し、今回はブラウン系で生地を探そう、ということになりました。 通常、ビジネススーツの色目の基本は黒、紺、グレーでブラウンはどちらかと言えば敬遠されていた色目ですが、最近のビジネスカジュアル化に伴い、徐々に人気が出てまいりました。 ただブラウンは絶対的に選択肢が少なく、当店でもディプロマット(生地サンプル帳)の中でも両手で少し余る位の数しかご用意がございません。 そうなるとヴィンテージクロスの出番!ということで、充実のラインナップの中から選ぶことになりました。
ここで1つ問題が,,,,Aさんからのご要望でスリーピースは譲れないということ。 となれば、Aさんのご体型から鑑みると、最低でも3mの長さは必要,,,,, しかも格子柄は柄合わせをしなければならないのでNG、尚且つ生地によってはお台場仕立てやベスト衿付、チェンジポケット等の追加で生地が必要となるデザインは不可、とお伝えした上で、ようやく見つかった生地がこちら
羊のマークがチャーミングな英国製〝HIELD BROTHERS″(ヒールドブラザーズ)です。 打ち込みがバシバシに効き、柄も今の世では絶対に織ることの出来ないThat's Britishな生地となります。
余談ですが先日大阪の生地問屋の中でも重鎮と呼ばれる方からこのヴィンテージクロスについてお話を伺う機会があったのですが、何故30年程前の生地が今の世で再現出来ないのかというと、織機はもちろんの事、一番の理由は糸とのこと。 昔の生地に使用していた太番手で膨らみのある糸を紡ぐ紡績機がもう今では存在しないからだそうです。 そう言われると最新の生地と比べると確かに肌触りは硬く感じますが、反面暖かさも感じ取ることが出来ます。 当店でご用意しているヴィンテージクロスは保管状況が良かったので、虫食いや日焼けしている生地も少なく、今の世でも十分仕立ててお召し頂ける物が多いです。 ベーシックな無地物も多く残っておりますので、是非一度ご覧になられてみてください。 それでは今回のご注文内容を詳しくご紹介したいと思います。
今回のご注文内容で最も特徴的なものが※のワイドピークドラペル下衿R強め、でしょう。 ここ数年、ブリティッシュ回帰という流れが続いていたので、ラペルデザインはややナローのストレートカットが主流でしたが、最近ではいにしえのクラシコイタリアスタイルが復活しつつあり、それに伴って画像のようなワイドラペルで下衿のカーブが強くついたものが、イタリアのプレタブランドから多く提案されております。 その流れは2020年SSコレクションでも顕著に現れているので、今後はクラシコテイストが主流になってくると思われます。 これに伴い、マニカカミーチャ仕様のようにカジュアルなスーツスタイルがビジネスカジュアル化の波と同調し、人気が高まってくるでしょう。
以上、今回はこのような内容にて進めることになりました。 Aさんに気にいって頂けるように、気合を入れて仕様書を作成したいと思います。 また1か月後の仕上がりを楽しみにお待ちください。