2023年1月13日更新
読者の皆さん、お久しぶりです。初代SHOPMASTERの吉村です。 SHOPMASTERを引退して早10年余り。 その間、オーダースーツチェーンビッグヴィジョンの経営や、青森(秋田、山形)のスーツ工場、新潟のシャツ工場の経営を中心に吉村グループ全体をけん引して参りました。 おかげ様で、新型コロナの影響はあるものの何とかしぶとく頑張っております。 さて 今回は、最近お客様から『昔のヨシムラらしさが失われつつある!』というご指摘を頂きまして、そのヨシムラらしさ(ヨシムラスピリット)とは何ぞや?ということで、久しぶりに筆を執ることにしました。 まず、私にとっての「ヨシムラらしさ」とはこんな風に考えております。
※:HPでのウケを狙った個別のこだわり仕様を開発するのは比較的簡単です。工場を苦しめずに量産化というのは、ただこれを唯一の一点物とすると工場には手間ばかりかかってメリットがありません。Something Specialな仕様を量産化し、工場への発注量を増やすことで工場にも喜んでもらうという意です。(クラシコ仕様などが典型例です。)
ですが、こういた「ヨシムラらしさ」も代を重ねるうちに、初代の想いが少しずつ失われ、古いお客様からは「ヨシムラらしさ」に欠けるとのご指摘を頂くようになりました。 そこで今回は初心に戻って自ら範を示す意味合いで、お客さまいらっしゃ~いに投稿します。 今回ご紹介するお客様は、某大学の理事長様(そのうちネタバレします) この理事長は私の釣り友達でもあるのですが、スーツにジャケットにご子息に、更には大学の白衣に!と日頃からお世話になっている方です。 話は、その理事長からのこんなお話から始まります。(ちょっと前の話)
話は変わります。 実は、その理事長、スーツには結構なこだわりのある方でした。
こういったビンテージの変わり種をご用意できるのも「ヨシムラらしさ」の1つです。 でも、今回はその話ではありません。話を理事長との会話に戻します。
・・・ということになったのです。 それが、確か丁度1年前。 その頃、当社でどんなことが起きていたかというと、、、ヨシムラの新着情報にありますが、大柄プリント裏地の新柄製作 これはレディース担当の富田さんが主担当で頑張っていたのですが、詳細はこちらをご覧ください。
読者の皆さんはこういった裏地がどう作られるかあまりご存じないと思いますので少し脱線してオリジナルのプリント裏地がどう企画されるかというと、はこんな感じです。
そして、今回のお客様の裏地は、その大柄プリント裏地を検討している(上記②~④の過程)時に、大量に発注するから「ちょっとだけ無理を聞いて!」と試作を依頼したのです。 そこで、いただいた大学のイラストをご紹介!
そう!これをスーツ(ジャケット)の裏地にします! 「え~っ、これを裏地?派手すぎない?」というのはさておき、でも面白そうでしょ? 理事長も面白そう!と喰いついたこのイラストを裏地にプリントする企画。 ここからが大変でした××× 読者の皆さんから見てどうでしょうか? まず、イラスト右にある大学案内は裏地プリントには不要ですよね。 また、イラストの中を見ても「未来を描く、自分がいる」は広告には良いですが、裏地としては不適です。 そうなると簡単にカットはできないので、イラストを作ったイラストレーターさんにお願いしてイラストを修正(理事長を経由して依頼) そうすると、こうなります。(よく見ると空が広がってます!)
お~っ、なかなか洒落てるね!これならプリントさえできれば意外と簡単にできそうだ! ・・・と思った方は、素人です。(失礼) 読者の皆さんは、諸々の裏地がどのように印刷されていると想像されますか? 生地は、長さで概ね50m、幅で145cm前後の幅です。 プリントされた裏地の出来上がりイメージはこんな感じです。(同じ柄をリピートしながらプリントします。)
今回のイラストを1つの柄として、裏地のサイズに当てはめると横145cmを優先して当てはめると縦は約100cmになります。 そして、この縦100cmというのは、絶妙に都合良く出来ておりまして、 型紙(画像では裏仕様のイラスト)に実際に合わせてみると縦100cmといのは、一般に上着の丈は75-80cmですからそれに縫い代やゆとり量を加えた長さとしてはピッタリの長さでした。(除くコート) 裏仕立てのイラスト図に合わせるとこんな感じです。
おっ!少し左右に無駄が出そうですが、これなら良い感じです。 そこで、一瞬これならイケる!と思うのですが、、、 どんな仕事もそんなに甘くない×××。問題がまだありました。 それは、、、一見すると良い感じに見えたこのイラスト。 少し見方を少し変えてみます。 実際裏地を使う、裏仕様のイラスト画に当てはめてみます。 分かりやすく真ん中に位置する女の子のイラストで。
はい、皆さん、お判りいただけましたね。 そう、一見すると良く出来た感じに思えたこの裏地も、このままリアルに製品化すると柄が巨大に見えてしまいNGです。 真ん中の女の子のイラストがそのままプリントされた姿を想像してください。 まぁ、秋葉原的には良いのかも知れませんが、これではさすがに理事長も着づらいでしょう。 そこで、最終的な製品にする前に、もう2つ修正をすることにしました。
1つ目の修正点はイラストが主張しすぎないように全体を縮小 これは、先述の女の子のイラストで分かるように個々のイラストが大きくなりすぎる弊害を除くことです。
そして2つ目の修正点は、合わせる表地との色バランスです。 表地のバランスというと“???”と思われるかもしれません。 でも、裏地はあくまでも裏地。表地とのバランスがあってナンボですから、表地を意識しない裏地の企画はありません。 そうしてみると、今回のイラストはいかがでしょうか? 全体に赤や黄色、ピンクとカラフルでどんな生地にも合いそうと言えば合いそうですが、実際にはこれらの色合いは濃色スーツには合わせづらく、実用性が低くなります。 そこで、1つ目の修正で全体を縮小した分、余りが出るため今度は縦に上下にイラストを広げてもらい、濃色のスーツに合わせやすいよう上を紺系の色合いに、下をグレイや淡色系の生地に合わせられるようにお願いしました。 具体的にはオリジナルの図柄では上は夜空をイメージした濃紺・黒でしたのでそれをそのまま違和感が出ないようイラストを上に夜空を高くしてもらい、一方、下は海(水)を意識した水の部分を下に広げてもらったのです。 これで、濃色のスーツでは上の方のイラストを中心に使い、カジュアルや明るい色では下を使えば良いのです。 こうして出来た最終裏地がこちら。
どうでしょうか? 出来上がりは横長の長方形から縦長の長方形に変わり、女の子のイラストも全体の縮尺が変わったため目立たなくなりました! また仕立てる際の表地の色とのマッチングも上2/3、下2/3を上手く使えば、表地に合わせた使い方が可能です。 更には、このままですと1/3を無駄にするように思えますが、使わない1/3相当は袖裏やポケットの裏地として使用することでSDGSの時代にマッチした形にしています。 「よし!これで行こう!」 ようやく最後に裏地用イラストが完成しました! そうしてメーカーさんにプリントを依頼して1か月 出来上がったものを縫製工場に持ち込み、いよいよ縫製です! 縫製指示は、東京ヨシムラの若手の河本君に仕様書作成をしてもらいました。 その辺は次回、“お客様ありがと~う”で改めてご紹介するとして、今回はご注文内容の概略だけご案内します。 今回のご注文はこんな内容です。
さて、次回はこのジャケットの完成お披露目です! どんなスーツ(ジャケット)になるのか?楽しみですね! 読者の皆さんも「ヨシムラらしさ」をご堪能下さい。
ご紹介したイラストは有名イラストレーターの方に依頼して作画してもらったそうですが、実は、このイラストには理事長の“ある想い”が込められています。 それは、明海大学には外国学部/経済学部/不動産学部/ホスピタリー・ツーリズム学部・保健医療学部・歯学部とありますが、このイラストの中にそれぞれの学部を示すアイコンが入っています。 例えば、不動産学部を示す物としてビル等建物が描かれていたり、経済学部は女の子のイラストのスカート部分のように折れ線グラフとか、ツーリズムの方はパンダとか自由の女神、保健医療学部・歯学部は口のイラストや随所に“歯”のイラストが入っているのに気づかれましたか? ただのオモシロイ、派手な、イラストではなく、大学の想いが込められているんです。 こんな想いをジャケットの裏地にするなんて!まさにSomething Specialじゃないですか。