2023年5月19日更新
楽しく長かったGWも終わり、通常運転に戻って早1週間。 英気を養ってバリバリお仕事をこなされているかと思いますが、あまり飛ばし過ぎて次の連休(お盆)までにバテてしまったら本末転倒ですからね、これから暑くなることですし、まずはマイペースで祝日の無い6月を乗り切ってまいりましょう。
さて、今回は遠方にお住まいにも関わらず、定期的にメールオーダーを頂けるAさんより面白いご注文(少々難儀な?)を頂きましたので、そちらをご紹介したいと思います
それは2月某日、1本のメールから始まりました。
Aさん、もう還暦なんですね。 数年前に一度お会いした時はそんなお年だとは感じませんでしたが、文面にあるように人は平等に年を重ねていきますから、認めたくなくても誰しも何時かは迎えるもの。 私も52ですから後7,8年もすれば同じく還暦。 願うならばそれまでに人生を終えるのが理想なんですが,,,,,冗談です笑 まだまだ行きたいところがたくさんあるので、そんな簡単にくたばりたくありません笑
スイマセン、余計な話でしたね、本題に戻りましょう。 還暦のお祝いと言えば、お子さんやお孫さん達が赤いちゃんちゃんこを贈る、というのが定説?なのでしょうか、色々な方からお話を聞いたところ赤に関連したアイテムを贈られるのが多いようです。 Aさんも仰られているように真っ赤な生地でジャケット、となると芸人さんみたくなりますし、ストレート過ぎて面白くないというか、いつ着るねん?といったことになりますから、せっかくなら普段でも着ることの出来る物の方が良いですよね。 しかし真っ赤でなく赤に紐づけた生地、う〜ん果たしてどうしたものか?と悩みながらも次のような返信をしました。
Aさんから頂戴してご注文履歴を見ると、なかなか個性的でインパクトのある生地をお選び頂いており、真っ赤なジャケットも普通に着こなされるのでは?というのが私の印象なんですが、やはり普段使いとしては難しいのとテレビに出ている芸人の〇〇さんみたい、と揶揄されるのはあまり嬉しいことではありませんよね(その方の大ファンなら別ですが) ただ還暦=赤の定説を無視してしまうと単に普段使いのジャケットになってしまいますので、普段使いと還暦祝い(赤)の両方をクリアするのはこのソラーロだけということでAさんに提案したところ次のようなご返信を頂きました。
やはりAさん、ソラーロはチェック済だったようですが、今回の還暦=赤にはお考えが及ばなかったようですね。 今回の課題も、Aさんのお好みも両方クリア出来たので、してやったりといった感じです笑 またこのソラーロジャケットに合わせてボトムのオーダーもご検討頂き、本当にありがたい限りです。 昨年はCOOL MAX OXのオレンジでジャケットをお仕立てさせて頂きましたので、せっかくならこちらにも合わせられる方が良いかと思い、次のような返信を致しました。
ジャケパン仕様の場合、最も大切なことが着回し力を高めること。 ただ色目の相性だけで提案するのはセミプロ、本当のプロはその合わせ方をした時、どのような印象を与え、どういったシチュエーションに合うのか?までを考え提案しなければなりません。 そこに至るまでには当然お客様との信頼関係を築く必要がありますが、私が常々意識していることはお客様に対して絶えず好奇心を持ち続けること。 どのようなお仕事をされていて、何処にお住まいで、趣味やファッションのお好み等をしっかりとヒアリングした上で、初めてお客様の心に響く提案が出来ると考えています。 傍からみると他愛もない世間話をしているように思われているかもしれませんが、そういった会話の中にこそ次に繋がる提案のヒントが隠されていたりするので、私自身非常に大切にしています。 先のご案内をしたところ、Aさんよりデザイン決定のご連絡を頂きました。
X23-3207 SOLARO 薄茶
シルエットは標準で。 ボタンですが、水牛かナットボタンの濃いめの色が良さそうに思いますが、おすすめがあれば教えてください。 裏地はキュプラで。ソラーロの色合いに合いそうな裏地の色が想像できないので、何かおすすめがありましたら教えてください。 ステッチについては、糸色を変えたり、総ステッチにするのはやり過ぎという感じがしています。(←GOOD!) 普通にAMFステッチで、色はお任せしようと思っていますが、南浦さんの意 見を聞かせてください。 同じ理由で、ボタンホールの糸色変更はしないことにします。
概ねデザインは前回を踏襲したものをお考えですが、やはり裏地やボタン、ディテールでお悩みのご様子でしたので、Aさんには次のような返信を致しました。 (全てを表示すると非常に長くなりますので、私の提案をご依頼頂いた部分のみ切り取って表示しております)
裏地・・・・AK1600-27 >>>表地の色目のインパクトが強いので、裏地の色目は控えめでうるさくない色目の物が良いかと思います。 キュプラ裏地の1600-27(カーキ)が最も表地に近い色目ですので赤を引き立たせるにはこちらが最適です。
ボタン・・・・本水牛900-92(茶ツヤ有) >>>ナットか本水牛か、と問われれば、私は本水牛がおススメです。 表地の色目に対してダークな物ですと全体的に締まった印象、ライトな色目の物だと軽快感が出ますので、前者であれば900-92(茶ツヤ有)か800-4(同ツヤ無)、後者なら900-91(べっ甲ツヤ有)か800-3(同ツヤ無)がお薦めです。 オプション料金が掛かりますが、焼き加工を施したのH31,H42辺りも雰囲気的に合いますね。 このソラーロの色目に黒は重すぎる印象を与えるのでこちらは外した方が正解です。
オーダーは既製品と違い、色々裏地やボタンなどの付属品やデザイン等、好みの物を選ぶことが最大の魅力と言えますが、出来るからといってあれもこれもとなると、取り留めのない単にゴテゴテした服に仕上がってしまいます。 品良く仕上げるコツは最もアピールしたい点(生地やデザイン)を決め、それ以外の物は引き立たせ役に徹するようにすることです。 今回はソラーロの玉虫感が引き立たせたい物であり、それ以外のボタンや裏地は控えめにすることによりソラーロの良さが活かされることになります。 このようなやりとりがあり、ようやく生地とデザインが決定しました。 (本当はもっと回数を重ねてやりとりをしておりますが、全部を紹介すると膨大な量になりますので、お伝えしたい部分のみ切り取ってご紹介しております) 果たして気に入って頂けるか? これはどのお客様からのオーダーでも感じることでありますが、これだけの時間と労力を掛けたので、その努力はきっと報われる、と信じて仕上りを待つことにしたいと思います。 それでは次回をお楽しみに。