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夏のハーフパンツセットアップをご紹介します。


『心頭滅却すれば火もまた涼し』なんて言いますが、こうも暑いとそんなことできるはずない!と思ってしまうのは私だけでしょうか。

夏休みがある事(この職種では珍しく、ありがたいです。リフレッシュさせていただきました)とビール(お酒類全般)がとにかく美味いこと以外は、個人的に夏はあまり良いことが無いと感じている、東京店SHOPMASTER(佐野)です。
この暑さは、苦行としか思えませんね。。。、早く涼しくなることを切に願います。

さて、楽しい夏休みは終わってしまいましたが、まだまだ暑い夏は続くということで、
今回のお客様いらっしゃ~いでは、暑い夏を快適にかつCOOL(粋)に楽しんでいただける、《ハーフパンツのセットアップ》をご紹介します。

『えっ?オーダーでハーフパンツ?そんなのできるの?』と疑問に思う方もいますよね。私も初めは、『ん?聞き間違いかな。』と思ったのですが、(ほとんどご注文をいただかないので)本当にハーフパンツだった。。。という珍しいオーダー。
ちなみに、ハーフパンツのお仕立てはもちろん可能ですので、この原稿を読んで自分も試したいという方はお気軽にお申し付けくださいね。

今回ご紹介するお客様は、まだお若いのですが、オーダーをある意味上手に楽しんでいただいているAさん。
上手にと書かせていただきましたが、デザインやサイジングの幅が広く、かつ様々な素材を組み合わせて洋服(スーツ)を作る事が出来るのがオーダーの良いところ。
ある意味デザイナー的なこと(もちろん限度がありますが)ができるのですが、それをいつも存分に楽しんでいただいているので、上手にと書かせていただきました。
特に今回のハーフパンツはオーダーを上手に利用している一例かと思います。

そんな自由な発想をお持ちのAさんですから、いつもご注文内容は結構難しいものが多く、いつも頭を悩ませます。(汗)まあ、私も悩むのを楽しんでいますけどね。
今回もハーフパンツのセットアップですし。

さて、今回Aさんのご要望(イメージ)としては、、、

《海外セレブがリゾートで優雅に着るハーフパンツのセットアップ》

Aさんからそう伝えられ、なるほど、、そうきましたか(汗)と苦笑い。

Aさん: カジュアル服ではセットアップってよく見かけたりするんだけど、どうも安っぽくって。
かと言ってハイブランドは高いし、どこかいやらしく(成金みたい)見えてしまうのが嫌で。
佐野: なるほど。そういう事だったんですね。確かにAさんの言う通り、街で見かけるセットアップってそんなイメージですよね。
選ぶのを間違ってしまうと、イケイケな感じと言うか、カッコ悪いですし。
Aさん: そうなんです。いいのが売っていない。だからこそオーダーしたいなって。
佐野: はい。今回もなかなかハードル高いですね。。。(汗)

さて、ここまで読んでいただいて疑問に思うことって、『どんな生地で作るの?』が一番多いのではないでしょうか?
そもそも、このハーフパンツのセットアップって、スーツ生地(WOOL系)では表現できないのでは?と思っている方、そうなんです。もちろん、スーツのジャケットの下にセットアップなので同生地でハーフパンツを作るとなると、、、とっても変ですよね。

とてもじゃないですけどスーツの生地ではまず作れません。
ハーフパンツのセットアップ実現には何点かクリアしなければならない課題があります。

まず1つ目は、、、《生地》です。

今回のオーダーで使う生地は、なんと《デニムのシャツ生地》
普通のシャツ生地は皆さんご存じの通りペラペラなので、ハーフパンツを作ったら下着?くらいのイメージにしかなりませんが、お選びになったデニム生地は、普通にシャツとして仕立てたら、ジャケットが着られない肉厚感。ジーパンの厚さと同じくらいと言った方が伝わるかな。

シャツ生地からとは、、、Aさん良く見つけましたね!
普通ならスーツ系の生地から作ることしか頭に浮かびませんが、シャツ生地で作ることを思いつくなんて、流石としか言えません。

生地は、デニム生地で決まり、まずは第一関門突破。
ですが、2つ目の課題がまた難しいところで。

大人が穿くハーフパンツで、気を付けなければならない一番のポイントは、、、
《サイジング&シルエット》これに尽きます。

いい大人が(いい方が悪いかもしれません。)股下の短いハーフパンツを穿くと、、、
いい言葉が見つかりませんので(汗)なんとなく察してほしいのですが、足を出し過ぎもちょっとアクティブ過ぎますし、セレブ感がなくなる。逆もしかりで、長すぎるとどうも不格好に。
また、長さ同様でどの程度の太さ(シルエット)にするのかも重要ですね。
上物とのバランスもありますし、丁度いい大人のリラックス感を演出するシルエットの設定はなかなか難儀です。

更に今回サイジングを難しくしたのが、選んだ生地がデニムだということ。
デニム=縮む。そう、縮みを考えたサイジングを考えなければならないという難題が。

実はこのシャツ生地で私はシャツを作ったのですが、洗濯後縦方向に2cmほど縮みました。そのことを参考に股下の長さを決めていくことに。

Aさん: う~ん。シルエットについては、丁度今日穿いているパンツに合わせる感じで。
ただ、股下が悩むなぁ~。縮みがどの程度になるのか。
佐野: 股下もですが、裾口の設定も難しいですね。ワタリ(モモ巾)からの繋がりですからパンツのシルエットのキモになるかと思いますよ。
Aさん: 確かに。丁度いいイメージのモノがあればいいんだけど、、、無い。
だから作るんだけど。(笑)
佐野: そうですよね。(苦笑)まずは、股下を設定してそれから裾口のバランスを決めましょう。腰回りのシルエットは今日穿いているパンツが参考ですしね。
裾口も少しはイメージしやすいかと。

参考になるパンツがあったことに内心ホッとしながら、膝より何cm上か?それとも膝を隠すか?何度も鏡で確認しながら、慎重に股下の長さ裾口を決めていきます。

通常のスラックスであれば、股下を決める時は、裾を折り返して実際の長さを、お互い確認しながら決めていけるのですが、今回はハーフパンツ。
折り返す距離が長すぎて折り返すことができない。。。ですから今回はパンツの外側にクリップを付けて長さを確認しながら決めていきました。

Aさん: これくらいかな。膝頭よりちょっとだけ下に設定して、縮めて膝がちょっと出るくらいが理想ですね。
佐野: 自分の経験からきっとそのくらいに設定すれば、理想の長さになるはずです。
この長さで勝負しましょう。

さて、ここまで読んでいただきましたが、一体このハーフパンツをどんなデザインにしたのか、まだご紹介していませんでしたね。気になっていましたか?
ハーフパンツのオーダー自体がレアケースですからね。デザインよりも本当に作れるのか、どうやってサイズを決めていったのかに注目してしまいますよね。

ですが皆さん、デザインもかなり凝っていますので、そちらも見逃せませんよ。
それでは、今回のハーフパンツのデザインをご紹介します。

◇デニムハーフパンツ◇

生地

デニムシャツ生地

基本デザイン ハーフパンツ仕上げ
タック ノータック(消しタック)
ウエスマン ベルトレス仕様 左右に尾錠付ける
※尾錠持ち込み 角四角にしてベルト巾1.9cm 帯巾4cm
脇ポケット ナナメ
ピスポケット 右 >>> ボタン留め
左 >>> ポケットなし
裾口 シングル >>> 裾口から3.5cmの位置をミシンたたき仕上げ
裾口スリット2.5cm入れる
前立て ボタンフライ >>> 前カン釦ぶち抜き
ボタン 黒蝶貝

デザインをご紹介させていただきましたが、正直ほとんどが特殊な仕様ですから、ちょっと伝わり辛いかなと。私の文章力が無いからとも取れますが、そこは出来上がりを楽しみにしていただいて、ひとまずは、こんなデザインなんだ~くらいで覚えておいていただけたらと思います。

ハーフパンツをメインにご紹介をしておりますが、今回のオーダーは《セットアップ》ですからね。パンツだけじゃなく、上物も忘れてはいけませんよね。

今回のテーマをもう一度おさらいしますが、

《海外セレブがリゾートで優雅に着るハーフパンツのセットアップ》

ですから、ハーフパンツに合わせる上物は、《半袖シャツ》です。しかもプルオーバーで。
これをセットアップで着るって、リゾート感ありますよね。

それでは、続けてシャツのデザインもご紹介させていただきます。
ハーフパンツに続いてこのシャツもなかなかのくせ者ですので、、、まずはどんなデザインになったのかご紹介させていただきます。

◇プルオーバーシャツ◇

基本デザイン プルオーバー ※デザイン別紙あり
衿型 ホリゾンタルワイド 剣先6.5cm
※台衿ボタンなし
半袖 裾から3cmの位置にステッチを入れて スリット1.5cm
ポケット 3つ付ける ※デザイン別紙あり
バックデザイン BOXタック内ループ付き + スプリットヨーク
ボタン 15mm黒蝶貝ボタン ※持ち込みボタン仕様(スーツ用のボタン)

ハーフパンツ同様に読んだだけではなかなか伝わらないデザイン。。。
そう、工場に出すオーダーシートも正直特殊なデザインが多かったので、伝わりやすいように、絵や図を描かなきゃなぁ~と、私が難しい顔をしていると Aさんが、、、『僕が絵を描くんで大丈夫ですよ!』と、なんと自らデザイン画をおこしてくれることに。

Aさんの描いた今回のプルオーバーシャツの全貌をご覧ください。

う~ん、なかなかここまでするお客さんもいないので、毎度ビックリしますが、よほど洋服が好き、心から洋服作りが好きなんだという事が伝わってくるので、私も何とかその熱い思いに応えたいなと感じてしまいます。

もちろんあまりに実現不可能な事は、『すみません。』とお断りをさせていただきますが、私たち工場を含めて、《頑張ったら何とか実現できるんじゃないか》という事に関しては最大限努力したいと思っています。 Aさんのように、自分もこんな感じで、、、と思っている方は是非ご相談くださいね。

さて、ここまでくればあとはオーダーシートに抜け漏れがないよう、そして工場に伝わりやすいように仕上げていかなければ。。。Aさん期待して待っていてくださいね。

次回は、どこまでAさんの目指した、《リゾートで優雅に着るハーフパンツのセットアップ》が実現できたのか、Aさんにお披露目していただきます。
その完成度はいかに。皆さん次回の『お客様ありがとう』まで楽しみにお待ちくださいね。


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