HOME > お客様いらっしゃ〜い > 一味変わったフォーマルスーツ【マオカラー】

一味変わったフォーマルスーツ【マオカラー】


皆さん、こんにちは。
秋も深まりつつあり、関東でもようやく木々たちが色づきを見せている11月下旬。衣替えも終えて、冬本番の準備というところでしょうか。

暑さはどうあがいても避けられませんが、(裸になっても暑いには暑いですからね。)
冬は重ね着に重ね着をすれば、意外と過ごせますから、私は好きです。
皆さんは春夏と秋冬どちらが好きですか?ぜひ教えてください。

さて、突然ですが、皆さん【マオカラー】ってご存じですか?
【マオカラー】とは、立襟が特徴のスーツの形であり、毛沢東の「毛」の中国語読み、まお(Mao)からとられており、その昔、中国の高い階級であった官吏が着用していたアイテムとして、フォーマル度合いの高いスタイルです。

イメージしやすい形でいうと「学生用蘭服」、いわゆる「学ラン」ですね。あれに近い形です。(学ランは立襟の中でも詰襟という中心がホックで止められるようになっていますが、マオカラーは中心に隙間があり、前を留めることができない仕様です。)

時折ミリタリーアイテムや、ワークジャケットで似た形を見かけることもありますが、【マオカラー】といえばやはり、フォーマルスーツとしての着用が一般的です。
今回はそんなご用途と、考えもしなかったマオカラーの魅力について語っていただいたKさんのマオカラーのご注文をご紹介をさせていただきます!


今回のご注文は、お電話での予約から始まりました。

9月某日

大嶋: お電話ありがとうございます。YOSHIMIURA&SONS大嶋です。
Kさん: 突然すみません。お伺いしたいのですが、
マオカラーの仕立ては今もできるんでしょうか。
大嶋: (マオカラー! これまた珍しいご要望だ。)
はい、ご案内できます!
Kさん: そうですか!
では今から伺おうと思うのですが、15時ごろそちらに伺ってもよろしいでしょうか。
大嶋: 15時ごろですね。かしこまりました。
ちなみに以前もYOSHIMIURA&SONSのご利用はございますか。
Kさん: いえ、今回が初めてです。
大嶋: かしこまりました!
もう1点、マオカラーをご希望とのことですが、ご使用日が決まっていたりしますでしょうか。
Kさん: いや、特にはなくて、ちょっとしたパーティーに着ていければいいなと思っているんです。
大嶋: かしこまりました。
それでは、お気をつけてお越しください!

今日の今日でさっそくご来店いただけるとは!
【マオカラー】作ろうと思う方、どんな方かなぁ。
使用日が決まっていなくをて作ろうとなるということは、パーティーの参加が多いのかなぁ。なんて勝手な想像をしながら、ご来店に向けて準備を進めました。


同日15時。

大嶋: いらっしゃいませ。
Kさん: 先ほどお電話したKです。
大嶋: Kさん、お待ちしておりました。
本日はご来店ありがとうございます。
早速ですが、今回YOSHIMIURA&SONSのご利用が初めてとのことだったんですが、どうしてうちにたどり着いたんですか?
Kさん: 以前お願いしていたところに久しぶりに行こうとおもったらなくなっていて、
ネットで「マオカラー」で検索をかけたらこちらが出てきたもので。
大嶋: そうだったんですね!ありがとうございます。
では生地を選ぶ前にYOSHIMIURA&SONSでご案内できる「マオカラー」についてご説明させてください。
どんな形、仕様をご希望なのか、YOSHIMIURA&SONSでのマオカラーがご希望のイメージと相違ないか確認したいものですから。
Kさん: わかりました。

「マオカラー基本デザイン」

前ボタン シングル5つボタン
襟型 専用衿(立襟)
前カット レギュラー、ラウンド、スクエアー、角
ベント ノーベント、センターベント、サイドベンツ他
腰ポケット レギュラー、パッチポケット他
袖ボタン 2つ、3つ、4つ他

大嶋: いかがでしょうか。
Kさん: うん、イメージしていた通りなので、これなら大丈夫です!
大嶋: そうですか!よかったです!
Kさん: ちなみに生地ですが、チャコールグレイで考えていまして。
お電話ではパーティーにと申し上げたのですが、フォーマルすぎず、ドレス感が出すぎないものがいいんですよね。
そんな感じの生地ありますか?
大嶋: ドレス感が出すぎないイメージですね。
かしこまりました。いくつかお持ちしてみます。

生地決め

おすすめした生地は以下の3つ

No.1 CANONICO 21MICRO

CANONICO 21MICRO

イタリアを代表するミルメーカー、〈CANONICO〉
生地のほどよい肉感とツヤが特徴の生地で、スーツ、ジャケット、パンツ、どんなスタイルにも相性のいい、スーツスタイル以外にジャケパンが主流になるつつある現代にうってつけの生地です。

No.2 CANONICO Super110‘s

CANONICO Super110‘s

No.1と同じく〈CANONICO〉より、〈Super110‘s〉のラインナップです。
見てわかるツヤ感と生地のなめらかさがが、ドレッシーな風合いを演出し、ビジネスにおいてはいい1着、パーティーシーンでは控えめだけど、おしゃれという、持っておいて絶対に損のない定番生地です。

No.3 葛利毛織DOMINX

葛利毛織DOMINX

日本を代表する生地メーカー〈葛利毛織〉
低速で生地を織り上げるションヘル織機ならではのハリコシとふわっとした生地感は、一度着てしまうと虜になること間違いなし。
派手すぎないその表情はまさに日本人の「侘び寂び」を表現している、そんな堅実さのある生地です。

大嶋: ドレス感が出すぎないようなものとはいえ、マットすぎたり、オーソドックスすぎるものだと、立襟の格好良さが薄れて、学生服のようにも見えてしまうので、生地で差をつけてあげるとエレガントな仕上がりにするのがよろしいかと思います。
パーティー的なご使用用途も含め、いくつか生地をおもちしましたがいかがでしょうか。
Kさん: そうですね、、、、
いい生地ですけど、パーティーといってもそんなにかしこまる感じではないので、もう少しカジュアルなものでもいいように思います。
大嶋: そうですか。かしこまりました!
ではこちらはいかがでしょう。

CANONICO 21Micron カバーコート

CANONICO 21Micron カバーコート

大嶋: 肉厚で形を保っていられる生地の強さがあることで、【マオカラー】のどっしりとしたBOXシルエットを作ることができます。また畝の強さが少しのアウトドア(カジュアル)な印象を演出しながら、艶感を損なわないハイブリットな生地です。
Kさん: うん、これだね。これにしよう!
大嶋: ありがとうございます!それではこちらで行きましょう!

デザイン決め

今回Kさんにお選びいただいたデザインは以下の通りです。

ジャケットデザイン

上衣基本デザイン 【マオカラー】
前ボタン シングル5つボタン
ベント ノーベント
袖ボタン 3つ
腰ポケット 両玉フラップ(レギュラー)

下衣デザイン

ウエスト 持ち出し付きループあり
タック アウト1本
脇ポケット ストレート
ヒップポケット レギュラー
裾口形状 シングル

マオカラーであること以外はいたってシンプルなスーツというところですね。
(マオカラーの時点でもう十分すぎるほどデザイン性がありますからね。)

大嶋: スーツのデザインは決まりましたが、合わせてシャツも見ていかれますか?
Kさん: そうそう、言おうと思っていたんだよね。
やっぱり【スタンドカラー】を1着合わせて持っておきたいね。
大嶋: かしこまりました!ありがとうございます!

そして決まったシャツのデザインはこんな感じです。

シャツデザイン

衿型 スタンドカラー

カフス型 中丸
胸ポケット
前立て
バックデザイン ノータック

上衣の立襟に合わせて、シャツも「スタンドカラー」の定番スタイル。
フォーマル度合いの高いダブルカフスには敢えてせず、
ご自宅でアイロンがけをすることもあるということで、引っ掛かりの少ないノータックをお選びいただきました。

大嶋: いやぁ、それにしてもマオカラーをご希望されるなんて、
なかなか注文うけることがないので、楽しみです。
Kさん: 作ってくれるところも少ないからねぇ。
実は父がスーツを着てばかりの人間で、その時に【マオカラー】も着ていたことがあってね。あの頃はなんでこんなもの着ているんだろうと思っていたけど
この年になってようやくわかったんだよ。
大嶋: どうしてですか。
Kさん: マオカラーならさ、ネクタイしなくていいんだよね。笑
だから首元が楽なんだよ。
大嶋: な、なるほど。思いもしなかったです。
(まさかマオカラーにそんな魅力があるとは。)

語っていただいたマオカラーの魅力、皆さんどう感じますか。
素晴らしい着眼点だと思いませんか?

いわゆるフォーマル衣装では、ネクタイ、ボウタイ、もしくはアスコットタイ等で首回りを演出するのが定番であり通例。

それがマオカラーになるとそれだけでフォーマル衣装になり、立ち襟によって首回りにカラーがくるものの、首そのものを締め付けることはありませんから確かに楽ですよね。
新しい考え方はお客さんから得ることができるのも楽しみの1つです。
さて、これでデザインは決まりました。


採寸

ここからは肝心の〈サイズ面〉
着ていただいたモデルは、マオカラー適応サイズに合わせて、少し大きめを。
通常のスーツであれば、84~88程度がKさんの胸の標準サイズのところ、マオカラーでのサイズは〈92cm〉
胸周りにゆとりをつけたいというご要望がない限り、お持ちすることがそうそうないサイズ感です。

大嶋: マオカラーはいかんせんご注文数が多くはないため、通常のスーツやジャケットのサイズと比べ、5分の1程度しか適応範囲がありません。
そして、いま着ていただいているこのジャケットの胸のサイズ感が実際の【マオカラー】の最小限のサイズです。
Kさんの胸の実寸からみると少し大きいように思うのですが、いかがでしょう。
Kさん: もともとマオカラーでぴったり作る気はないし、このくらいなら平気かな。
大嶋: そうですか!よかったです!
ではこのままマオカラーのサイズ感を確認するために、少し変わった方法をとります。

首元までボタンが来るのが【マオカラー】の特徴ですから実際の仕上がりイメージを共有するべく、衿を立てて、首元で留めてサイズを見ていきました。

定番のマオカラーにおいて重要な点は、綺麗なBOXシルエットを作り上げるために、【ウエストで絞りを入れすぎないこと】【首元まで詰まった際の胸のゆとりを考慮すること】が挙げられます。

コートで襟を立てて着用することはあってもジャケットで襟を立てることはそうありませんから、上記の点に注意を測りながら、通常の採寸とは一味違った、新鮮な採寸を進めていきました。。。


採寸後

大嶋: 私が先に言ってしまっていいのかと思いつつ、言わせていただきます。
出来上がりが楽しみです!
Kさん: 私もです!
大嶋: 初めてのお仕立てで、【マオカラー】のご注文ですからぜひシャツと合わせて、ご着用姿を店舗で見させてください!
Kさん: もちろんです!

以上、【マオカラー】をご注文いただきましたKさんのご紹介でした。
なかなか紹介できない(ご注文数が少ない)【マオカラー】の仕上がり、「お客様ありがとう」にてお披露目いたします。ぜひお楽しみに。


back number

過去のback number