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まさにパンツが主役!なスーツのご注文


何かと慌ただしい4月も中旬を過ぎようとしておりますが、そろそろ新生活に慣れてきたかな、って人も多いのではないでしょうか。 4月はスタートの季節ですからね。

ちなみに、
私SHOPMASTER(佐野)は、4月年齢が一つ上がり、ある意味で個人的な新しい年度のスタートって感じです。また大人の階段を一段上がってしまいました。
皆さんからの暖かいお言葉等お待ちしております。なんてね。。。(汗)ジョークです。
ですが、、、贅沢は言いません。YOSHIMURA&SONS東京店で皆さんの笑顔が見られれば、それこそが最高のプレゼントです。

って、逆ですね。(汗)皆さんを笑顔にするために今年1年も、手を変え品を変え楽しませていきたいと考えておりますので、改めてよろしくお願いします。
なんか所信表明みたいになりましたね。
何か自分のことを書いてしまい恥ずかしくなってきましたので、私の事は忘れていただき、、、本題に入ってまいりましょう。

さて、
春は新しい出会いが多い季節。
今回の《お客様いらっしゃ~い》は、そんな春の季節にYOSHIMURA&SONS東京店を初めてご利用いただくIさんをご紹介させていただきます。

Iさんとの出会いは、Iさんからいただいた、こんなご相談メールからでした。

件名:スーツパンツのオーダーに関するご相談(2タック・インプリーツ・ベルトループ位置)

YOSHIMURA&SONS 東京店

ご担当者様

はじめまして。突然のご連絡失礼いたします。

スーツのオーダーを検討しております。
今回は特にパンツの仕様についてご相談させていただきたくご連絡いたしました。

以下のようなディテールでのパンツの仕立てが可能か、お伺いできますでしょうか。
  • 2タック仕様
  • インプリーツ(内向きプリーツ)
  • ベルトループの位置を、ウエストバンドの上端から約2.5cm下にずらして配置
このループ位置につきましては、以下2点のスタイルを参考にしております:

1. <Fumiya Hirano THE TROUSERS>“EDWARD”に見られる現代的な解釈


引用:ビームスライフ横浜<Fumiya Hirano THE TROUSERS>EDWARD

2. 御社 大阪店での参考事例にもなっている、ボンタンスーツ(変形学生服パンツ)のディテール

https://www.vightex.com/wel/2004/04_11o/index.html

クラシックな仕立てに、少しカルチャー的背景を加えたユニークなスーツをイメージしております。

上記仕様でのオーダーが可能かどうか、ご対応の可否を教えていただけますと幸いです。

また、可能な場合の今後のご相談方法(来店予約・採寸時の伝達方法等)についてもご案内いただけますと助かります。

お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。

むむ、何やら面白いパンツをご想像されているな。
《2タック》《インプリーツ》この2点から、クラシック感のあるパンツをご検討されていることは想像できますが、、、ベルトループをパンツの腰帯から2.5cmずらして配置&【ボンタン】と言うクラシック感からかけ離れたワード。
イメージするクラシック感のある2タックパンツとは違い、なにやら一筋縄ではいかなさそうな感じですね。

読者の皆さんもIさんのように、『こんなオーダーしてみたい!』や『オーダーってどんな事が出来るの?』などなど、チャレンジしてみたいことや、疑問に思ったこと、お仕立てに関する些細なこと、何だってお気軽にお問合せOKですので、是非ご連絡くださいね!

さて、Iさんからご相談いただいたスラックス、クラシックなスラックスのようで、2.5cmのループ下り(かなり低いです)に、ジャパニーズカルチャーを感じるボンタン。
これは色々と難題だな、、、とIさんにお返事を返してみました。

I 様

こんにちは。
YOSHIMURA&SONS(佐野)です。
心地の良い春の陽気を感じる週末となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

この度はお問い合わせをありがとうございます。

Iさんは今回パンツのディテールに拘った、クラシックかつユニークなスーツをご検討とのことですね。

パンツの仕様等についての参考サイトもご丁寧にご連絡をいただきありがとうございます。
当社のアーカイブ記事もご参考いただいているようで嬉しく思います。
ありがとうございます。

さて、今回井上さんのパンツのご希望としては、
  • 2タック仕様
  • インプリーツ(内向きプリーツ)
  • ベルトループの位置を、ウエストバンドの上端から約2.5cm下にずらして配置
とご希望いただいておりますが、
上記3点の仕様につきましては、ほぼご対応可能かと思います。
※ベルトループの位置については、イレギュラー対応になりますが、
 別途指示書を工場に送れば可能かと思います。
 本日工場がお休みのため明日確認を取らせていただきます。

お送りいただいた参考サイトを拝見させていただきましたが、
1.のサイトで紹介されているパンツについては、上記3点クリア出来れば近い形で再現は可能かと思います。

2.で紹介しているスーツについても可能ではありますが、Iさんのイメージとしては、
1.のサイトで紹介されているパンツをベースにボンタンスーツのリラックス感、太さを落としこむ感じでパンツをイメージされているのでしょうか。 どれくらいの太さにしたいか等は、採寸をするためのサンプルのスラックスを穿きながらご相談もいただけます。

きっと2のイメージはご連絡いただいている、カルチャー的背景の事を指しているのかと思われますが、クラシックなパンツのディテールをベースにボンタンのようなサイズ感(カルチャー)を落とし込むことで合っていますでしょうか。

それとも、
あくまでカルチャー的背景の参考としてご提示いただいているのか、
それとも別のカルチャー的背景をIさんが持たれているのか
その点も教えていただけると助かります。

ループの位置については一旦お待ちください。
今後につきましては、それがクリアになってからとは思いますが、お仕立てをご検討いただけるのであれば、ご来店予約サイトからご予約いただければスムーズにご案内可能ですのでご利用下さい。

【ご来店予約サイト】
https://www.vightex.com/reservation/tokyo.html

採寸時の伝達方法等(イメージの擦り合わせ)につきましては、参考になる資料(写真や他のサイトでもかまいません)可能であれば参考になるパンツ、またはスーツ等がありますとお互いのイメージの擦り合わが上手くいくかと思いますので、お持ち込みいただけると助かります。

お忙しい中お手数ですがご確認をお願いいたします。

Iさんのお返事にも書きましたが、今回ポイントになってくるのは以下の2点。

  1. ベルトループの位置を、ウエストバンドの上端から約2.5cm下にずらして配置
  2. カルチャー的背景を加えたユニークなスーツ

1については、ベルトループを下げられる限界があり、ただ付ける位置を下げるだけという単純なことではありません。※理由は後ほど。
2については、抽象的な表現ですので一体どんなイメージなのか、言葉ではなかなか伝わり辛いところですから、入念なイメージのすり合わせが必要。

さんはどう考えてるのかなぁ~と色々と想像を巡らせているとお返事が、、

佐野様

こんにちは。Iです。
この度はご丁寧なご返信をいただきありがとうございます。

春らしい陽気の中、こうしてご相談させていただけることを嬉しく思っております。

さて、パンツの仕様についてのご確認ありがとうございます。
ご対応いただけそうとのことで、非常に心強く感じております。

ご質問くださった「2.の参考サイト(ボンタンスーツ)」に関しましては、お察しいただいた通り、あくまで「ベルトループの位置を下に配置するイメージ」としてご提示したもので、シルエットの太さそのものは、ボンタンのような極端なボリューム感は想定しておりません。

現在イメージしているシルエットとしては、NEATの“テーパード”モデル(現在は“スタンダード”として展開されているモデル)をベースに考えております。
  • 深めの股上
  • インタック
  • 裾に向かってややテーパードした上品なシルエット
といった要素が理想で、
Fumiya Hirano “EDWARD”に見られるようなクラシカルな佇まいに、NEATらしい立体感と上品さを掛け合わせたような雰囲気を目指しています。


引用:Continuer Inc TURPAN SATIN|TAPERED - Black BRAND NEATD

おっしゃる通り、実際のサンプルを拝見しながらの擦り合わせが非常に重要だと感じておりますので、ぜひご来店のうえでご相談させていただければと思います。

ループ位置の件、ご確認いただけるとのことでお手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。

日程を調整し、後日予約フォームよりご連絡させていただきます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

なるほど。少しずつですが、Iさんの考え(イメージ)が見えてきましたね!
今回のオーダーの一番のポイントは、どうやら【ループ位置】で間違いなさそうです。
画像まんまは難しいですが、股上を深く&タックを深く入れたり、そしてテーパードシルエットはクリアできます。
あと残る問題はループ位置です。

さて、課題となっているループ位置について工場に問い合わせてみると、、、

工場:2cmまではループを下げた事は経験があるのですが、、、それ以上下げてしまうと、他の箇所に影響が出てきて縫製が出来ないこともあります。。。

う~ん、やはりループ問題は中々クリアが難しそうです。
それはなぜか?Iさんにお送りしたメールで解説していきたいと思います。

I様

ご利用ありがとうございます。
YOSHIMURA&SONS(佐野)です。
先日はお忙しい中パンツについてのお問い合わせありがとうございます。

さて、
保留になっておりました、ベルトループの付け位置について工場に確認を取りましたのでご連絡差し上げます。

結論から申し上げますと、2.5cm下げてループを付けた実績はなく2cmまでなら可能とのことです。

2.5cm下げれなくもないのですが、下げてしまうと、パンツのお尻のポケットとの距離感がおかしくなってしまうこと、(ループとポケットの上端の距離が殆どなくなってしまいくっついてしまう。)タックの開き位置に干渉してしまうことが考えられます。

解消方法としては、ウエスマン(腰帯)を太くすること、そしてループを短く設定することでお尻のポケットに干渉しないようにすることが、今のところいいのではないかと考えています。

ただ、先日参考でお送りいただいた
Fumiya Hirano “EDWARD”には、腰帯が無く1枚の生地でパンツが作られている、クラシックで贅沢な仕上げとなっておりまして、一方でNEATの“テーパード”モデルは、通常のパンツのディテール(腰帯あり)です。

先にご提案差し上げた、【腰帯を太くする】は腰帯のないFumiya Hirano “EDWARD”では不可能となってしまいます。

この2つのパンツの要素をイイ感じでミックスしたイメージかとは思いますが、ループを2.5cm下げることを優先したデザインにするのか
それとも、NEATの“テーパード”モデルのようなシルエットを優先するのか悩みどころですね。

Iさんがどのくらいこの2つの要素を落とし込んだパンツをご想像されているのか
もしよろしければ、お持ちのパンツを拝見しながらご相談させていただければと思っておりますがいかがでしょうか。
ご検討どうぞよろしくお願いいたします。

課題になっているループ位置、メールでもご説明しているように、あまりに下げてしまうと、
ポケットに干渉してしまうんです。

ベルトループとポケットが近すぎると、、、どうもバランスが悪いですよね。
ポケットの位置をずらせたら、、、とも考えましたが、ポケットの位置は変更できず。

また、もう一つの課題として、ウエスマン(腰帯)有り無し問題が浮上してきました。
ウエスマンを有りにするのか、それとも無しにするのかでループにたいするアプローチもだいぶ変わってきます。

Iさんが何を優先するのか、、、考えているとこんなお返事をいただきました。

佐野様

ご連絡ありがとうございます。
ベルトループの位置に関するご確認と丁寧なご説明、大変ありがたく拝見いたしました。

今回のパンツに関しては、シルエットの参考としてNEATの“テーパード”(現スタンダード)モデルを挙げておりましたが、 あくまでシルエット感の参考程度であり、無理にNEATに寄せる必要はないと考えております。

むしろ、全体の雰囲気としてはFumiya Hirano “EDWARD”により寄せたいという思いが強く、そのため、ウエスマン(腰帯)のない仕様でも全く問題ございません。

また、ベルトループの位置についても、2.5cmにこだわる必要はなく、
「やや低めに見える印象」が表現できれば十分だと考えております。

なお、所有している“EDWARD”の実物を確認したところ、ベルトループの位置はウエスト上端から約2.5cm下、ループの長さは約4cmと、どちらも一般的なパンツよりもやや下げ・短めに設定されている仕様でした。

そのため、ループを短めに設定していただくことで、視覚的なニュアンスは十分に再現できるのではないかと考えております。

実際にFumiya Hirano “EDWARD”の実物パンツを持参のうえ、ディテールやシルエットの擦り合わせをさせていただければと思っております。
近日中にご来店予約をさせていただきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

課題としている、【ループ位置】【ウエスマン(腰帯)】について、ある程度答えが出てきた感じですね。
あとは、実際に現物を見ながら、どこまでこの要素をYOSHIMURA&SONSのパンツパターンに落とし込み表現するか。
数日後にご来店予約をいただき、Iさんとの綿密な擦り合わせをすることに。

~ご来店日当日~

Iさんは、今回のパンツの基になる、Fumiya Hirano “EDWARD”を穿いてご来店。

私: いらっしゃいませ!お待ちしておりました。
ご担当させていただく(佐野)です。
Iさん: 初めまして。今日はよろしくお願いします。

と挨拶もほどほどに、早速今回の本題にもなっている、Fumiya Hirano “EDWARD”をまじまじと見ながら、細かな仕様のご相談に入らせていただきました。
通常は生地決めから入るのですが、今回ばかりは、どこまでIさんのご想像するパンツを再現するかが重要ですので、先ずはデザインのご相談から入らせていただきました。
それでは皆さんにも、Iさんが実際に穿いているパンツをご覧いただきましょう。

うぅ~ん、なかなか凝ったデザインのスラックスですね。
生地を贅沢に使用する《ウエスマン無し》の仕様に、低いループ位置、そしてループがポケットに干渉しないように、ループの長さを短くし、かつ、ポケットの位置を少し低めに設定し、フラップ巾も細くしている。なるほどね。。。芸が細かいです。

Iさんのパンツを見ながら、それをオーダーシートに落とし込んでいきます。
いまご覧いただいているのがメインどころですが、書き込みすぎると分からなくなるため、
デザインシートは合計3枚に!!!

さて、大まかな打ち合わせを済ませ、あとは採寸時にシルエットやループ位置の再確認等をすることに話はまとまり、続いて生地選びに。

実はここでもある課題が、、、、それは、立体的なパンツに仕上げるための生地選びです。

Iさんの穿いているパンツは、肉厚のフランネル生地。
生地の肉が厚く、コシのある生地感があってこそ、パンツは立体的に仕上がります。

ですが、今回はこれからの季節に着られるスーツですから、生地は比較的薄く軽い、
《春夏物》がメインです。という事は、、、そう、この立体感を生み出す生地感は、春夏物ではなかなか難しい。

果たして、Iさんはどんな生地を選んで、どのように表現したのか、
それは、次回の《お客様ありがとう》でご覧いただくことにしましょう。
皆さん楽しみにお待ちください!


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