|
|
難しいコーデュロイ完成です。
|
Web読者の皆さん、新年おめでとうございます。(もう遅いって?!) 新春第1回目のお客さまコーナーは、暮れにご注文いただいた仕立ての難しいコーデュロイスーツでご注文いただいたAさんのスーツをご紹介します。 どんな所が難しかったか?詳細は前編のお客さまいらっしゃ〜いをご覧頂くとして。。。 簡単にポイントを箇条書きにするとこんな所でした。 1 縫い直しの利かない素材コーデュロイ >>>コーデュロイのような綿素材はウールと違って縫い直すと針の跡が残るため非常に縫いにくい素材です。 2 指定項目が多い! >>>詳細は前編をご覧頂きたいのですが、通常の仕立てと比べ約30項目程指定項目が多いこだわりのディテールでした。 一例を挙げると・・・ 1. フルステッチのダブルステッチ 当社の通常のお仕立ではAMFステッチを襟・前身頃・ポケットまわりに施しますがAさんはそれに加え肩・袖・背中まで入れる総ステッチ(フルステッチ) 加えてその全てをダブルステッチでやって欲しいとのこと。 ただのステッチでさえハリ跡を思うとやりにくいのにそれがフル&ダブルじゃ、工場の女工さんに喧嘩を売るようなもの? 2. 逆ハッキング このご依頼を受けた時、「あっ、昔あんな事をWebに出したばっかりに・・・」と思わず後悔。 どんなデザインかというと通常胸ポケットは外に向いて上に上がっているのに対し、ご依頼は逆に外に向いて下がっているようなデザインでした。 でも昔それ(逆ハッキング)をされたお客様がいて今回はお断りするというのは許せる話ではありませんのでリスクを犯しながらの挑戦でした。 3.パンツのディテールまで! パンツにはあまりこだわられない方が多い中Aさんはパンツにもこだわられました。 腰部の尾錠、ボタンフライの前立て、サスペンダーボタン、加えて先ほどのフルステッチをパンツまで・・・ ...という「やれやれ、どうするの?」といった内容でした。 それ故、私ですら指定項目30個では全部パーフェクトにやりきる自信がなく「お客さまいらっしゃ〜い」コーナーの最後では >落ちてくる30個の果物、果たして何個落としてしまうのでしょうか? ・・・と半ば諦め気味になっている始末。年末最後にちょっと気が重いご注文でした。 では、そんな出来上がりをご紹介です!じゃ〜ん! |
画像1:全体写真 >>> 横のイラストと比べていかがですか? 通常のスーツよりかなり絞りをキツクしているので脇の下の隙間がしっかり出ていますよね。 これではゆとりが少なくて内ポケットに物を入れられないかも知れませんがシルエット的にはカッコイイです。 |
|
|
画像2:フルステッチ(一部) >>> 全部は画像が多くなりすぎて出せませんが首の所のステッチでこんな感じ。 生地がワインカラーなのに対し糸色が黒だから結構目立ちます。 通常の襟部の他、背中、肩にも入っているのが分かりますよね。しかもそれがダブルで。 |
画像3:袖だって重ね釦(5つ) >>> 最近ちょくちょく見る袖5B。 こういったのは出来るだけ追加料金は頂かないようにしているんですが「塵も積もれば山となる」で結構コストアップです。 最近の原価高騰でややナーバスになっている当社です。 |
画像4:前立てボタンフライ >>> 久し振りのボタンフライ前立て。男性ってどうしてこんなにストイックなんでしょうね。 機能的にはジッパーの方が上なのに....でもカッコイイ! |
画像5:腰部の尾錠 >>> 当社の尾錠はウエスト調整機能はあまり期待できませんがコーデュロイのような厚ぼったい素材なら結構締め具合も良いですね。 |
さてさて、どうやら一応ご注文通りに出来ましたね。 ・・・と思いきや、懸念していたことが1つ発覚! それは・・・やはりステッチでした。 画像はマクロでうまく撮れなかったのでイラストにて掲載しますが、コーデュロイというのは凹凸(ウネ)がありますが、ステッチをミシンで入れる際、そのウネの凹の間を這わせて行くのが一般的なのですが、何分にも人のやる作業、ちょっとした手のブレでそのウネの凸を通り越しウネをまたいでしまったのです。 それが1箇所ありました。 しかも場所が襟だったので私としても かなり凹んでしまったのですが、こればかりは繰り返し説明した通りハリ跡が残ることからやり直しが利きません。 そこでAさんに素直に説明してご理解いただきました。 Aさんも直接お引き取りに来られたのでその時のご感想メールは頂けませんでしたが、 『これだけ無理を言っているのだから・・・』とご理解下さり助かりました。 ...ということで、今回は 指定項目30個=落ちてくる果物30個。 そのうち何とか29個は拾えて合格!といったところでしょうか? |
さて、ここまでは何とか良い話でまとまったのですが、実はここから先はちょっと話題を変えて読者の皆さんには悲しくなるようなお話です。 それは... 春夏物からの価格設定変更、各種オプション料金の追加・変更なのです。 詳細は3月の春夏物への切り替えまでにオプション一覧を改装しますのでそちらをご覧頂きたいのですが4月から始まる消費税の総額表示に合わせて、当社ではこれまで下記のオプションは無料で行っていましたが、今般 次の理由でこれまで無料だったオプションの一部有料化及び価格改定をしなければならなくなりました。 (実際には2004年春夏物から新価格を適用します。) 理由は >>> ■ 基本ディテールの充実 ■ >>>当社ではWeb開設当時より本水牛ボタンを無料サービス、その後もAMFステッチ無料サービス、脇当て無料サービス、額縁仕上げ(本切羽)とお仕立内容を年々向上させております。 これらの標準仕様のオプションは、一般的なお店ではそれぞれ1000〜3000円ほど追加費用を徴求している物ですが、当店ではこれまでインターネットでの売上増加とこのコストアップ分を相殺する形で社内吸収してきました。 が、これもそろそろ限界に来て参りました。 ■ こだわりディテールもできるだけ無料に!と考えていました。 ■ >>>これまで当社では↑の精神の元、例えば総ステッチや袖ボタン5個など出来るだけオプションは無料にしたいと願ってきましたが、昨今これが慢性化してきています。 こういったことはいわば『言った者勝ち』になっているのでこの辺最低限のご負担はお願いしたいと考えを改めました。 具体的には次の無料オプションを有料化したいと思います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◆ ウール価格の高騰 ◆ >>>そんな中ですが平成15年よりウールがじわじわ高騰し、原価がかなり上がってきています。 具体的影響としては・・・ ベースとなる価格帯の素材で1mあたり300円〜500円は上がっていますので1着換算で1,000〜1,500円のコストアップです。 ◆ ユーロ・ポンド高の影響 ◆ >>>更に悪いことに、今 巷で人気のあるゼニア・ロロピアーナなどのイタリア物、トレンドのブリティッシュ素材、その全ての仕入れ値に影響のあるユーロ・ポンドが高騰しています。 対ドルでは円高なのですが対ユーロ・ポンドでは円安です。 2000年対比で約30%の上昇は当時が安かったとしても現在では非常に厳しい水準です。 もちろん為替のヘッジも検討しておりますが、大きな相場の流れにはかないません。 具体的影響としては・・・ ベースがもともと高品質の原価の高い所の商品ですから1m当たりの仕入値でやはり2,000〜3,000円上がっていますので、1着当たりミニマム6,000〜9,000円です。 当店を含めきっとこの様なことを言うお店はこれからかなり増えると思います。 またこれに合わせて便乗値上げをしたり、販売価格を上げられないのであればどこかで仕事の手を抜くことを考えるお店もあるでしょう。(当店も便乗値上げと言われれば致し方ありません。) ↑によるコストアップを吸収するためだけの事を思えば、最良の対策は多分『中国縫製』への移行です。 何故なら中国元は米ドルとリンクしていますから工賃部分では円高メリットが利きますし、何よりもともとの工賃が安いですから。。。 しかし、当社は現状の中国にはまだ当社レベルの仕立ては無理と判断し、中国で縫製をするつもりはありません。 以上の理由で、SHOPMASTERも色んな所で悩んでおり、春夏物のサンプル帳では消費税の総額表示の問題と合わせ次のような新価格帯で臨もうと考えております。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
※お台場サービス等の廃止
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
私共は素材面でいい加減な品質の物でお仕立したり、縫製面やサービス面で手抜きは絶対にしたくありません。 どうか皆さまご理解いただきたくお願いいたします。 お客さまにご負担いただく以上は自分たちにはもっと厳しいハードルを課していきたいと思います。 |