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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!
プロのこだわり 〜大阪編〜 
4月も半ばを過ぎますと、厚ぼったい秋冬物のスーツともおさらばして、梅春物(※1)や軽やかな夏物へと衣替えの時期です。
売り場にも、カラフルな色がとりどりと立ち上がり(※2)と言いたいところですが、不況を反映してかフェース(※3)のスーツは相変わらずのダークカラー一辺倒。
やはり、これからの緑あふれる季節にはそれなりのキレイ目な色とご提案したいところですが、何せ川上(※4)も売れ筋のダークカラーのみを追いかける為かリスクを嫌がり、川下(※5)の当社も無い物は売れずで、せめて明るめの現物(※6)でもと、手当てに走り回る毎日です。

さて...
前ふりが長くなった所で、今月の「お客さまありがと〜う」では、そのスーツにオシャレ心とアイデンティティーを存分にちりばめたOさんの仕上がりのご紹介です。
ちなみに、冒頭分の先月のお客様いらっしゃ〜いでもご紹介した我々糸へん業界業界俗語ですので、Oさんの詳しいご注文内容と併せてご覧下さい。

それでは、百聞は一見に如かずです、そのユニークな仕掛けの数々をぜひご覧ください。

最大の見モノはコチラです
一見したところ普通の胸ポケットですが、ほらここからポケットチーフが現れます。

実はこの部分が今回の最も苦心したところで、工場と何回もの打ち合わせの末に仕上がりました。
具体的には、持ち込みの着物地の柄部分を胸ポケットの袋地として使い(普段は袋地として機能しています)さらに袋地の底を縫い止めずにつまんで持ち上げれるように工夫し、いざとなればつまみ出し、いかにもポケットチーフがあるかのように見せる細工です。
(BGMはポールモーリアのオリーブの首飾りがピッタリです。)

ちなみに、普通の胸ポケットはどうなっているかと言いますと、皆さんのスーツで胸ポケットの袋地を引っ張って頂ければわかりますが袋地はスーツの内側に表地としっかりと止められていて、引っ張っても決して全部は表に出てきません。
また、胸ポケットの底の縫ってある部分を頑張って解いて出してみても、ほらっ 地〜味な色合いのポケット地が出てくるだけでお洒落感はゼロですね。
画像は通常の胸ポケットの底を解いて開いた物です。皆さんは真似しちゃダメですよ。

今回、工場の職人さんも相談段階では
『こんな事やってみたことない。何でこんな事する必要があるの?』
と言われて私も立場がなかったのですが、こうやって出来上がった物と何もしていない物を比べてみるとやっただけのことはありますね。

簡単なようでマニュアルには無い職人芸の仕事をしてくれました。工場の皆さんありがとう!

他にも、カラークロスにも着物地を使用したり
腰裏にも着物地を張り付けたり

他にもフラワーホール&袖ボタンの切羽糸着物と同じグリーン色で統一して....

そして、全体のシルエットはブリティッシュにまとめました。

ちなみに主なディテールは。。。
3×1の段返り
>>>昔はこのスタイルが主役でしたと、Oさんの青春と共に過ごしたデザインですが、今やリバイバル(?)で目新しいと、若い人にも結構支持されています。

チェンジポケット
>>>ブリティッシュの定番としてお馴染みですが、3ピースに合わせると重厚で落ち着いたイメージになるのを計算されたようです。

クラシコ仕様
>>>本来ならブリティッシュにはちょっとどうかな?と、最初は思案されたようですが、クラシコが当社自慢の仕様ということもあり是非試してみたいということになったようです。
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★
Oさんは、今でこそ主に雑貨関係を取り扱ってられますが、かってはアパレルでスーツを初めとする重衣料を専門に扱われていた経歴の持ち主で、文字どおりスーツを知り尽くしたプロのデザイナーからのご注文でした。
カラークロスや腰裏への着物地の使用は、その機能性を考えるとあまりお勧めできません。
ただ、Oさんはそれらのすべてを判断した上、面白半分や奇をてらうという狙いではなく、デザイナー魂を込めた作品として、今回のスーツを仕立てられたようです。
今回仕上がりはOさんがご多忙でご来店が難しく、そのためお送りとなりましたが、Oさんからはご満足頂いた旨の連絡をいただきました。

★☆★ こぼれ話 ★☆★
過去に和素材を使用した例としては、裏地に着物地を使用した以外にも、和服地の産地として大島紬などで名高い鹿児島からは、和服地の振興策として和服地で洋服を作れないかという依頼もお受けしたことがあります。
ただ、縫製面や機能性及びコストの点で非常に難しく、なかなか実現に至らないのが実情です。

さて、スーツをお納めしてから数日後のこと、Oさんから1本のお電話を頂きました。
『仕立ててもらったスーツですが、友人の評判も良く、これから私の商売としてこの雰囲気のスーツをぜひ売っていきたいので、私のショップで扱わせてもらえませんか?』との事です。
もちろん、お断りする理由もありませんので是非とお願いして、今後は当社の卸売部門のお客様としてOさんをご登録させていただきました。
こんなケースは初めてで、プロの眼鏡にかなったと、秘かに喜んでおります。