|
|
初春らしい仕上がり
|
新年明けましておめでとうございます。 今年の干支は「ネズミ」とやら、重箱の隅をほじくる。。。じゃなかった、細かいところにも目を配り、細心のチュー意を払いながらも、チュー目していだけるような話題をぜひともご覧頂きマウス。 と、かなり苦しいゴロ合わせですが、今年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 というところで、おめでたい年明け最初にご紹介するお客様は、Fさんの仕上がりです。 新年早々と言うことで、できるだけ華やかな彩りといいますか、ディティールに凝った仕上がりのスーツになっていますのでぜひご覧下さい。。 |
■ 素 材 ■ | |
(伊)オルメザーノ社製 フラノ地 チャコールグレイ
最もクラシカルな素材としてメンズの世界では定評あるフラノ地が、今回の素材です。 アメトラ良し、イタリアンクラシコ良しの使い勝手のあるフラノ地は、いつの時代でもどんなテイストにも、またジャケットにパンツにとどんなアイテムにもすんなりと馴染む定番としてお馴染みです。 今や古典と化した言葉ですが、「グレイフランネルの似合う...」はまったく同感です! |
■ ジャケット ■ | |
□ マニカカミーチャ仕様 □
すっかりお馴染みの仕様ですが、本来は軽量化を意識して春夏物に活躍の場が多いのですが、もっとも秋冬物らしいフラノ地でチャレンジしてみました。 マイルドな肩のラインなど素材を問わずそれらしい雰囲気を漂わせています。 また、画像からは分からないのですが、着心地はこれでフラノ?ホントに?と言うくらい軽くしなやかです。! |
|
□ ボタンはナット □
フラノをナットで合わせるか!という声も聞こえそうですが、Fさん熟慮の末ナットのブラウンになりました。 色のコンビネーションがなんかイタリアっぽい!と言えばそう見えてくるから不思議です。 □ ボタンホールは手縫い □ 分かりにくいのですが、ボタンホールは全て手縫いです。 特にフラワーホールは存在感たっぷりで、モッコリと盛り上がったホールは手で触って見れば質感を実感出来ます。 通常のボタンホールは専用ミシンでダダーっと縫ってしまいますので、ひと針、ひと針縫い上げる こんなオプションも職人の人間味を感じられます。 |
|
□ ステッチは5ミリ □ 標準はコバでピックの至って控えめステッチですが、これはステッチは入ってます!とばかりの主張するタイプです。 □ 裏地はワイン □ グレイの表地にワインの裏地、この取り合わせはどこかイタリアの貴族めいた印象を与えてくれます。 名刺ポケットは付いていますが、ペンポケットとタバコポケットは不要との事で省いています。 |
■ ベ ス ト ■ | |
□ 背中の尾錠は共地 □
普通は背中の尾錠は裏地で製作します。 それが今回は表地と同じ共布で製作しました。 Fさんは特に意図は無いのですがとの事ですが、上着を脱いだ時この仕様は威力を発揮します。 元々ベストの尾錠の本来の意味は薄れ、今や装飾的な感が強い尾錠ですが、ワインの裏にこの尾錠は「尾錠ここにあり」の存在感が出ています。 |
■ ベ ス ト ■ | |
□ 裾口はダブルで糸止め □
ダブルで折り返しの場合は折り返しの部分をホックで留めるのが一般的ですね。 ホックを外して、折り返しの中に溜まったホコリを捨てやすくする為で、確かではありませんが我が国独自の留め方ではないかと思います。 つまり、欧米へ行きますとこのFさんのような糸止めが殆どになります。 見た目は別として、裏から簡単にチャチャッと糸で留めて終わりというわけです。 どちらがどうとは言えないのですが、創意工夫と手先の器用さが持ち味の我が国では、折り返しに溜まったホコリを何とか...というお客様の要望に応えたテーラーが思いついて、それが実用的と言うことで広まったと言えそうです。 ちょうどサイドミラーに折り畳みを加わえたように、なんでも取り入れたものをそのまま用いるのではなく、改良して使いやすくするという日本人の精神はこんなところにも垣間見られますね。 □ パンツの裏は総裏 □ パンツには標準仕様としてヒザ裏というものが付きます。 画像右のようにちょうどヒザのあたりまで付けられ、すべりを良くする事や摩耗による生地の傷みなどを軽減する効果があります。 そして更にこれの範囲を広げて、画像左のように総裏仕様と呼ばれる仕様もあります。 なぜ総裏にするのか?総裏の良い点は3つ ※ 冬場の寒さは下半身から暖めてと、生地を二重にして防ぎます ※ チクチクする生地を直接地肌に当たらないようにする敏感肌対策 ※ 薄い生地の場合、透けて下着が映らないようにするマナーモード と言うことで、一度付けたらヤミツキで...と言う方もおられますので、特にこの季節には防寒対策のひとつとしてお勧めです、お試し下さい。 ※:画像は左がパンツ総裏の画像、右が参考まで標準の仕様です。 □ 腰裏はシマスレーキ □ 当社の標準仕様の腰裏はマーベルトと言いまして、シャツなどが出てこないよう工夫された滑り止めが付いたタイプですが、こちらはそれが付かないタイプで、業界用語でシマスレーキの腰裏と呼んでいます。 シマは縞模様のシマで、スレーキは素材です。 クラシックな仕様で、昔のオーダーメードではこれを付けるのが当たり前でした。 つまりこれを見ただけで、「おっ、オーダーやな」と既製服との違いがひと目で分かったものでした。 今はこれにこだわられるお客様は殆どおられませんが、古いオーダーのお店ではいまだにこのタイプの腰裏を付けていると言うことも聞きます。 通常のマーベルトの方が使いやすいとは思いますが、このタイプでと言う方はお申し出下さい、無料でお付けします。 |
初春にふさわしいと言うことで、こだわりてんこ盛りのFさんのお仕立てでしたが、いかがでしょうか? 世界に1着しかないスーツを!とまでは意気込んで作る必要はないかと思いますが、スーツもアイデンティティのひとつのカタチと考えれば、自分流スタイルも悪くないのではないでしょうか。 それでは、今年も皆さんのヒントになるようなお仕立てをドンドンとご紹介しますので、どうぞご期待下さい。 |