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これならもう3年は大丈夫?
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梅雨明けも間近となり、スーツを着る人にはそろそろ辛い時期になりますが皆さんお元気でしょうか? あと1ヶ月我慢すれば夏休み!という人も多いと思いますので頑張りましょうね。 さて 今月はそんな暑い(熱い!)時期は、スーツにとっても傷みやすい過酷な季節ですので、スーツの傷みを解消しリフレッシュするということで先月ご紹介したSさんを例に、スーツのリフォームについて出来上がりをご紹介したいと思います。 Sさんはどんなご依頼だったかというと・・・ かれこれ5年前に仕立てたスーツが、経年の劣化と共に汚れ、痛みが酷くなってしまい、ついには裏地が破れてしまったというお客様。 画像でご覧いただくとこんな感じの状態でした... |
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画像をよく見ると・・・ << 左画像 >> Sさんがデュポンのライター(金属製)を使っているからだと思いますが、固形物が一カ所に恒常的に置いているとその底部が摩擦で擦れ破れてしまいます。 Sさんの場合は右腰ポケットにきっとライターを入れるんでしょうね。 その部分だけ破れてしまっています。 ※同様のことは例えばこんなケースでよく起こります。 ・携帯電話ホルダーを腰に付けている人 ・財布の四隅に金属が付いている物を使っている人 などなど << 中画像 >> こちらは汚れの画像。 襟周りはどうしても食事の食べこぼし等が付きやすい場所です。 画像のピンを打った先にそれぞれ白い汚れが付いています。 良くある虫食いはこういった食べこぼし箇所がまず狙われます。 << 右画像 >> これはボタンの跡。 よっぽど着込んでいただいたんでしょうね。5年着用ですからね... ボタン跡がくっきり付くまで着込んで頂き有り難い限りなのですが、果たしてこれまで綺麗になるのでしょうか? その他、内ポケットなども結構痛みが酷い状態でした××× さて、 こんな酷い状態でお預かりしたスーツでしたが、私共からは次のような対処をすることにいたしました。 << 汚れやボタン跡などは >> こちらはスーツの水洗いで。 水洗いはドライクリーニングでは落ちない水溶性の汚れが特に綺麗になりますが、出来上がりは丁度シャンプー後の髪の毛のように生地の毛並みがふわっと復元しますから、ボタンなどの跡が付いてしまった場合は有効な手だてです。 ...とはいえ、摩擦で擦れて跡になった物は生地がその分薄くなっているだけに、そう簡単には取れませんから過度な期待は禁物です。 << 裏地の破れやすり切れは・・・ >> こちらは水洗いではどうしようもありませんのでスーツのリフォーム。 裏地の交換が一番です! 裏地も使っていく内にだんだん光沢感が落ちていきますから水洗いでも完全な復元は出来ません。 まして、破れてしまった物は張り直すしかないんです。 |
■ そして出来上がりは・・・ ■ | |||||||||||||||||
こうして承ったSさんの5年越しのスーツ。 さて、どんな仕上がりになったでしょうか? 手順としては、、、最初に水洗いを施して、、、その後、裏地の張り替えです。 水洗いに10日、裏地貼り替えに10日掛けてしまうとほぼスーツを1着仕立てるのと同じ時間が掛かってしまいますが、何とか仕上がりました。 出来上がりをご覧下さい。 例によって、BEFORE & AFTER形式で掲載しましょう。
いかがでしょうか? 裏地の破れは張り直しによって綺麗に直りました。 まるで新品同様です。(当たり前か、裏地は新品なんだから・・・) その他、傷んでいた内ポケット玉縁や玉縁周りなどもこの通りです。
やっぱり張り直しは綺麗になりますね♪
続きましては個別に付いた汚れの数々... 特に襟周りが汚れていましたのでそこをクローズアップしてみますと...
いかがでしょうか? 汚れはもちろん綺麗に落ちていますが、それ以外にも気になるところとしては襟のステッチにも注目してみて下さい。 BEFOERの方はステッチの凹凸が強く出てピリング(引きつれ)を起こしつつありましたが、水洗い後は綺麗になっていますよね。 この辺が当店の水洗いが単なる水洗いではなくスーツのメンテナンスと言われる所以です。 状態が悪い物は襟周りのステッチなど入れ直すこともありますから.. (こう考えると水洗いも高い買い物でないと言えるでしょ..)
使いすぎて生地がテカってしまう... なんか高校生の時代を思い出してしまいますが、そんなボタン跡はどうなったでしょうか?
う〜ん、、、 さすがに全ては消えていませんが、それでもかなり改善しました。 微妙にまだ跡のが残っている所に妙なリアリティーがありますね。 完全には消えなかっただけに70点合格の75点といった所でしょうか。(^^;)
もう一つ、画像では出せないことなのですが、、、 Sさんの水洗い&リフォームをしたスーツ。一つ特筆すべき事がありました。 それは...タバコの匂いが消えたこと。 裏地に穴が開いた原因にもなったデュポンのライターからも想像できるようにSさんはヘビースモーカー。 それ故、お預かりした時スーツに付いたヤニの匂いが凄かったです××× でも、これが水洗いでスッキリ綺麗になって、、、 洗剤がこんな色になっていました。 願わくば、Sさんの肺の中がこうなっていないことを、お祈りするばかりです。 |
今回のSさんのリフォーム&リフレッシュ、ご覧いただき如何でしたでしょうか? 5年着用されたオーダースーツ。 そもそも5年も保つというのが既製品では珍しいことですが、 更には5年経った物を更にリフォーム&リフレッシュであと3年は保たせられそうです。 これこそ地球に優しく生きる今の時代ならではのテーラー業なのかも知れません。 皆さんも是非参考にしてください。 |
■ 人には言えない失敗談(おまけ) ■ | |||||
>>> 前編のお客様いらっしゃ〜いを良くご覧になった方なら分かるかと思うのですが、 ご相談を受けた際、私からSさんにこんな提案をしていました。 |
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もちろん、お直しの際には工場へ「破れていた箇所にタグを付けて!」と職人さんにその旨指示を出したのですが、、、 こうなる予定が右画像、出来上がったのがこちら左画像。
ありゃりゃ、、、元の場所のままです×××。 う〜ん、、、 工場の人にここまで言ってもなかなか理解して貰えないのか、、、 (工場ではラインで作業をしていますので、裏地を張っている人にポケットの使用方法まで意識して貰うのは難しいのです) ということで、こちらの方はいたしかたなく、店舗でタグを手付けで付け直してお渡しすることにしました。(画像はありません。ゴメンナサイ!)
腰ポケットにライターを入れるのを止められないSさんに対して前編で私は 『裏地が今後傷みにくくなるよう肉厚のキュプラ裏地を付けましょう!』とご提案しておきながら・・・ あれっ? 出来上がった裏地は元の物と全く同じ。 そうです、裏地の種類を変更し忘れてしまいました。 言い訳ではありませんが、実のところ工場に対する指示としては別裏地に変更するようキチンと指示を出していたのですが、これもまた工場が見落としたのか、元と同じ裏地を付けてしまったのです。 言い訳画像はこちら。縫製工場への指示書です。 でも、ミスはミスです。 例え工場のミスであっても、対外的には自社のミスですのでSさんに謝らなくてはいけません。 そこでこんなお詫びメールをお出ししました。 |
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最後は私としては大変不本意なことをしてしまいましたが、Sさんへはメールの通り事情の説明を行ない、後はSさんのご判断に委ねることにいたしました。 そうしたところ、Sさんの方も物を大切に、、、という気持ちがあるからこそ、こういったご注文をされた事もあって『問題なし』と仰って頂き、何とか「裏地張り替えの張り替え」はしないで済むことになりました。 Sさん、助かりました。ありがとうございます。 私の方もスーツを無駄なく、長く愛用して頂きたいと願った故の本稿でしたから、Sさんのご判断には本当に救われました。 お客様から見ればお店のミスでも工場のミスでも職人のミスでも一緒のことです。 今後はこういったことがないように工場とのやり取りには今まで以上に気を遣ってやらねばなりません。 今回は大いに反省したSHOPMASTERでした。 |