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ジーンズに合わせるフォーマル完成です。
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10月に入りグッと涼しくなってきましたが皆さん衣替えはそろそろお済ませでしょうか?
クローゼットの奥から冬物スーツを出してくると“あ〜っ、虫に喰われている!”とか“あれっ、前は入ったのに?!”...なんて新鮮な驚きもありますよね。(*^_^*) さて そんな季節の変わり目の今月ですが、今月のお客様ありがと〜うコーナーでは先月ご紹介した新潟県のWさんにスポットを当て、ご注文いただいたフォーマルジャケットの出来上がりをご紹介したいと思います。 前編の「お客様いらっしゃ〜い」でもご紹介しましたがWさんはこの秋ご結婚されるとのことで、こんな内容のご注文を頂きました。 簡単に振り返りますとこんな感じのオーダーでした。 |
■ Wさんのご注文 ■ | ||
用途は・・・ 結婚式で着用するタキシードライクなジャケット >>> 式は最近のトレンドであるハウスウエディングスタイルだそうで、昔の披露宴のような堅苦しさを出さないようにしているため、ウエディングの衣装もフォーマル度を少し落として、カジュアルウエディングスタイル ご本人からのご要望で『ボトムは綺麗目ジーンズに合わせられるようなジャケット』をとのことでした。 ・・・綺麗目ジーンズとは、、、リーバイスしか履かない私には縁のないもの。 う〜ん、、、年の差感じます。 デザインは・・・ 思いっきりナローなシングル1Bジャケット >>> Wさん自身が非常に細身の身体ということもありますが、デザインはナローな1Bジャケット。 イメージ的にはモードなシャネルって感じでしょうか? ご相談の際はこんな画像を参考画像に頂きました。
ポイントは・・・ 1.ナローシルエット >>> 最大のポイントはナローシルエット。 一口にナロー(細身)シルエットといっても単に身幅を細くして、襟幅を細くしただけではバランスが良くありません。 私共のオーダーではこんな所まで意識してディテールを決めていきます。 ・ 襟幅6.5cm >>> ファッション誌では「襟幅●cmで決まり!」的な表現がありますが、これはご体型や顔の大きさ、身長によってもご提案することは変わってきます。 Wさんは小柄で細身ですので思いっきり細くできるのですが細すぎると安っぽくみえる事もありバランスをとって6.5cmに ・ 胸ポケット幅2.0cm >>> ここまで気遣うオーダー店は余り多くないと思いますが、襟幅を細くすると胸ポケットや腰ポケットの太さも細くしないとバランスが取れません。 そこで胸ポケは通常30mm位のところを20mmにしてお仕立しました。 ・ アームホール小さく >>> ウエストの細さは身幅を詰めれば良いという物ではありません。 ウエストの細さは脇の隙間の広さで視覚的に大きく変わります。 そこでアームホールを小さくし袖幅全体も1.5cmほど細くしてお仕立しました。 ・ 袖先セミフレア >>> すっきりナローに見せることが主目的ではありましたがどこかにモード色を出したいと思い、細くした袖幅を袖先で気持ちフレアにして色気を出すことに。 2.くるみボタン >>> ここまでですとただのモードジャケットになってしまうので、フォーマル色を高めるためボタンはくるみボタンにして、フロントは拝み合わせにしました。 3.ネーム >>> Wさんは当初ネームの刺繍は要らないとのことだったのですが、折角の記念になるジャケットですし、それではお名前でなく記念日の日付はどうですか?とご提案したところ、結婚記念日である2009.10.31を刺繍することにいたしました。 |
■ それでは出来上がりは? ■ | |
ご注文から約3週間
10月に入るや否や工場から仕上がりが届きました。 早速ご覧いただきましょう。 まずは全体像から。。。 □ 全体写真 □ いかがでしょうか?前掲したWさんのイメージ画像と比べて。。。 1つボタンでフォーマル色の出るピークドラペル。 >ゴージ位置が非常に高く、全体に非常にナロー。 実は、画像をご覧いただく際に少しご説明(釈明?)しなくてはいけないことがありました。 それは... Wさんが非常に小柄で細いため標準体のボディーに着せるとお腹周りが窮屈で上手く撮影できないのです。 ですから、画像のお腹周りに横に引かれ皺が出ていること、窮屈にボタンを留めているためフロントカットが拝んでいる(カッタウエイが綺麗に裾広がりになっていないこと)など御容赦下さい。 それを割り引いてもなかなか良い感じです。 □ タイトさ加減 □ それでは少し角度を変えた写真でタイトさ加減をご覧下さい。 いかがでしょうか? 身幅が細いことはもちろんですが、アームホールを小さくして袖幅も細くすると、脇の隙間がこんなに大きくとれて、とても細くグラマラスに見えますよね。 これはお客様のご体型によって出来る・出来ないの限界はありますが、タイトシルエット好みの方には一つ理想的なシルエットではないでしょうか? □ ナローなディテール □ 先に胸ポケットの口幅を細くすることが全体のナロー感のバランスを取る、と申し上げましたがこの画像をご覧になるとお分かり頂けると思います。 たかが胸ポケ、されど胸ポケットです。 個人的にはもう少し傾斜を強くしてみても良いかな?と思いましたが、十二分に合格点でしょう。 |
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□ カッタウエイ具合 □ カッタウエイは先に紹介の通りお店にあるボディーですと引かれ皺が出てしまうのでなかなか上手く撮れなかったのですがそれでも頑張って撮ってみました。 引かれ皺は無視してカッタウエイ具合をご覧下さい。 いかがでしょうか? 結構、ラウンドが大きいですよね。 どこかテーラー&カッターさんの雰囲気です。 □ ネーム刺繍は・・・ □ 些細なことかも知れませんが今回ご提案した結婚記念日の刺繍。 今月31日だそうで、安易にそれでは2009.10.31と入れようかな?と思ったところ、思わぬ所から横やりが.... 帰国子女の某女史より2009.10.31は日本語的すぎるから良くないのでは?とのことでした。 つまり10月はOctに表記すべきと言うことで、最終的には『Oct.31St,2009』といたしました。 私はそこまで知りませんでしたがOctの次は「ピリオド」で、日付31Stの次は「カンマ」なのだそうです。 う〜むっっ 出来上がりはいかがでしょうか? ワインカラーの裏地も綺麗ですね。 以上がWさんのオーダーで事前にある程度私が意識していたこのジャケットのポイントでしたが、今回のオーダーでは予想外のことが起こりました。 それは... 私の予想以上に工場が頑張ってくれたという意味なのですが、こんなうれしい誤算?がありました。 □ うれしい誤算 その1 □ お客様いらっしゃ〜いではコメントしませんでしたが出来上がりを見て、私が気に入った点は・・・ ズバリ! 襟のロール感 どうでしょうか? 襟のロール感というのは表地、芯地、プレス技術色んな要素から仕上がりが変わってきますが、今回のこの襟のロール感はイージーオーダーとしては最高レベルではないでしょうか? 1つボタンでVゾーンが深く長いため、ロール感が非常に生きている感じがしますが、この出来上がり大変気に入りました!(Wさんはどうだろう?) |
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□ うれしい誤算 その2 □ もう1つ、これは次のトレンドに影響してくる問題ですが、 襟のR(曲線)具合に注目してください。 当初、Wさんからは次のような画像を参考画像に頂きました。 これはどこのお店のか分かりませんが、ここ数年のトレンドを端的に表現していて、特徴として下襟が非常に直線的です。(ちょっと見えづらくてスミマセン、、、) これはこれで若い方を中心に“若さ”“シャープさ”を醸し出すため人気なのですが、そろそろそのトレンドにも陰りが見えてきています。 そこで私が最近意識しているのは襟のRの丸さを少し強めたシルエット。 今回のWさんのジャケットではそこまで露骨にいたしませんでしたが、Vゾーンが広いこともありゆるやかな襟のRが非常に上品に仕上がりました。 どうでしょうか? 意識して見てみると、この緩やかにカーブしたR感、最近あまりないので新鮮に見えませんか? このR感と襟のロールの柔らかさが相乗効果を出してこのジャケットを良い感じに仕上げているのです。 さてさて こんなジャケット、担当した私としては大満足の1着となりましたがWさんの方はどのように受け止められるでしょうか? 是非是非ご感想を伺いたいところです。 |
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