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贅の極みエスコリアル
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ようやく秋らしくなってきましたが読者の皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
暑くも寒くもなく、行楽には良い季節になりましたね。 この陽気になりますと一気に衣替えが進みますが、皆さんは冬物のご用意はお済みでしょうか? お店の方はそろそろ平日の夕方や土日を中心にお客様が増えてきましたので、皆さんも是非秋冬物を探しにお越し下さい。 さて 秋冬物のご注文が増えてきますと当然仕上がり例も沢山出来上がってくるのですが、今月は今年のSpecial Selectionで一番にご紹介したエスコリアルでご注文を頂いたYさんをご紹介したいと思います。 Yさんは以前もこのコーナーにご登場いただきまして、なかなかどうしてかなりのスーツ好き。 ストイック(禁欲的)と言っても過言でないぐらいのお客様で、高い要求水準から、フィッター中島を苦笑いさせる、強敵?な方です。 ちなみに、前回のご注文はこんな感じでした・・・ 0812お客様いらっしゃ〜い 学習院卒業者必見 0902お客様ありがと〜う 学習院風タキシードの出来上がり |
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いかがですか? Yさんがスゴイのは何と言っても仕立てたスーツを飾る部屋(自分のお気に入りの物を集めた部屋)を持っていること。 画像はYさんのご自宅のお部屋です。 さて、 そんなYさんの今回のご注文は・・・幻のウールと言われるエスコリアル。 エスコリアルは入手困難さからかバブル期には1着70万とも100万とも言われ、値段があってないような素材でした。 ご存じない方もいらっしゃると思いますのでどんな物かをご紹介しますと・・・ |
■ エスコリアルとは・・・ ■ | |
PURE ESCORIAL 〜絶滅したと云われたウール〜 エスコリアルとは中世16世紀に、スペインがその栄華を極めていた時代にスペイン王族にのみ独占的に使用が許されていた特別な羊(から織った織物)を言います。羊には色々な種類があり、有名な所ではメリノウール(オーダー向け羊毛の代名詞)、チェビオット種(ツイードに使われる)、サフォーク種(フラノなどに使われる)等々20種類ほどありますが、その中でもエスコリアルは、ミニチュアシープと言わる小型種に属し、絶対的な頭数が少なく大変稀少な種類です。 そのエスコリアルが何故、一度は絶滅したと言われるかというと、 それは先述のスペイン王族だけに使用が許され特別に肥育されていたことが災いし、スペインの没落、英国帝国の誕生と共にいつの間にか歴史の影からひっそりとその姿を消してしまったからです。 事実、エスコリアル純血種はスペイン国内ではその後見つからず、長らく絶滅したものと考えられていました。 それが19世紀の初頭、スコットランドの牧場で見つかります。 遡ると16世紀の時代にスペイン王族から数頭寄贈されていたエスコリアル純血種の子孫が残っていたのです。 英国の牧場主はそれを希少性、純血種保護の観点から、ウイリアムハルステッド(William Halstead)、テーラーロッジ(Taylor & Lodge)、リードテーラー(Reid & Taylor)、ロバートノーブル(Robert Noble)、など数社が組合を作り、牧畜をオーストラリアのタスマニア島に移し、そこで独占的にその生産・管理を任され販売されています。 年間の生産量はわずか20〜30t程度。 これはカシミヤの生産量の1%以下の数量しか生産できておらずこの点からもその希少性がお分かり頂けると思います。 |
■ Yさんのデザインは・・・? ■ | |||||||||||||||||||||||||||||||
さて
前置きが長くなりましたが、そんなエスコリアルをYさんがどんな風に仕上げたかと言いますと、、、こんな感じ。。。 (前回が学習院風ですからね、、、期待してしまいます!) |
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さて、 こんなデザイン。 言葉だけで皆さんどんな仕上がりを想像されますか? う〜ん、、、良く分からない というのが実情ではないでしょうか? そ・こ・で・・・今回は、、、仕上がり紹介を次回まで先送りせず、今回はすぐにご紹介いたします。 じゃぁ〜ぁん。 Yさんのスーツこんな風に仕上がりました。 |
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いかがでしょうか? ちょっと正面からの画像が光の加減で分かりづらいのですが、なかなか良い感じに仕上がっています。 特に、パンツの股上の浅さは画像からも良くお分かり頂けるのではないでしょうか? ジーンズより、股上が浅い!というのも頷けますよね。 こんなデザインを、素材は幻のウールエスコリアルですからね、、、 何という贅沢なんでしょう。 まったく、Yさんってどんな人?!何している人?って感じですよね。 そこで、Yさんに聞いてみました? 私 『Yさん。Yさんってお仕事なんなんですか?』 Yさん「僕はおもちゃ屋です。」 私 『えっ?おもちゃ屋さん?』 ・・・Yさんの名刺にはこんな会社名が 株式会社バンダイ おもちゃで有名なバンダイの社員さんでした。 そして、何でもバンダイが栃木県におもちゃミュージアム(おもちゃの まちバンダイミュージアム)を作り、Yさんはそこの統括プロデューサーも兼務してるんですって。 なるほど、どうりでYさんの部屋はユニークなおもちゃだらけなんだ・・・ 妙に納得した私でした。 で、こうしてお納めしたエスコリアルはYさんも大満足。 その後、Yさんからこんなご感想メールを頂きました。 |
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筆者注:↑実名で書いておりますが、ご本人からOKを頂いております!
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さて、 あなたなら幻のウール、どんな風に仕立てますか? 週2名様限定で、イージーオーダー 98,000円、仮縫い付きフルオーダーで 153,000円です。 当社でも長らく入手困難だった生地です。是非お試し下さい。 |
■ おまけ・・・ 〜 科学的根拠を 〜 ■ | |
今回は幻のウールと呼ばれるエスコリアルでのご注文を紹介しましたが、でも世の中には“幻の●●”とか“究極の▲▲”というような言葉だけが先行する商品が今の時代には溢れているような気がします。
実は、私自身本稿を執筆している際、この点では気が引けるものがありました。 やはり科学的な根拠を示すべきでは・・・と。 そこで、お客様であるHさんにご協力いただき、エスコリアルと他のウール素材と比較してみることにいたしました。 比較方法は、以前もやったことのある顕微鏡写真。 Hさんは、お仕事で顕微鏡を使われていると言うことで、お昼休みに撮影して頂き、画像を頂きました。 比較対象となったのは伊REDA、伊CANONICO、伊ロロピアーナの各商品 画像をご覧いただく前に一般論を申し上げておきますと、、、 1. 英国物はイタリア物よりも生地がしっかりしている。 >>> これは生地を織る、織り密度(打ち込み)が高いためにこのようになりますが、織り密度が高いということは顕微鏡写真で見た時、糸と糸の間の空間(写真では黒く見える)部分が少ないと言うことです。 2. 不純な原毛が少ない >>> 生地には色んな織り方がありますが、その織りから飛び出した不純な原毛・毛羽(ケバ)が少ない方が綺麗な仕上がりになります。 生地は原毛の細さだけでも打ち込みだけでもダメです。織った後、どう毛羽をカットして綺麗にするか、これも素材感の善し悪しに大きく影響します。 3. エスコリアルはカシミヤ並の原毛の細さ >>> 1本の糸は複数の原毛から出来ていますが、その原毛1本1本が非常に細いのもエスコリアルの特徴です。 羊のどの部位の毛を使うかにも因りますが、エスコリアルでSUPER130〜200'S位と言われています。 |
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いかがでしょうか?ご覧になって。 読者の皆さんは掲載した各メーカーのおおよその価格はご存知かと思いますが、見事なまでに画像と価格が比例していると思われませんか? ちなみに、騙されやすいのは細くない原毛を使っても打ち込み(織り密度)を甘くしてしまうと触感的にはソフトに感じられると言うこと。 でも、こういった生地は耐久性が劣りますからスーツにしてもすぐ堅崩れしたり傷んでしまいます。 当社で扱う生地はあまりこういった物はありませんが、きっと写真で見ると、黒い隙間や不純なケバが沢山あるんでしょうね、、、 案外、これからの時代、商品紹介には顕微鏡写真が必要なのかも知れません。 (Hさん、撮影協力本当にありがとうございました♪) |